近鉄680系電車

近鉄680系電車：古都を彩った特急車両

近鉄680系電車は、1964年に近畿日本鉄道が京都線の特急専用車両として、旧奈良電気鉄道（奈良電）の車両を改造したものです。ここでは、予備特急車として改造された683系電車についても解説します。

改造の背景

東海道新幹線の開業により、近鉄の名阪特急は大きな打撃を受けることが予想されました。そこで近鉄は、新幹線と接続し、観光地へのアクセスを向上させる特急ネットワークを構築することを目指しました。
その第一歩として、京都・橿原線系統に有料特急を設定することになり、車両は在来車からの改造で準備することになりました。

奈良電由来の車両は、元々特急・急行用であり、固定クロスシートを備えていたため、改造ベースとして最適でした。

680系電車の誕生

大阪線特急車に準じた設備とするため、冷房化を含む大規模な改造が実施され、モ680形とモ690形→ク580形（2代目）による2両編成（680系）が2本用意されました。

予備特急車については、天理教本部を沿線に有する京都・橿原線系統の特殊性も考慮して、団体車としての使用を基本とする軽微な改造で済まされることとなり、680系の改造時に対象から外された車両を種車として3両編成（683系）を組成しました。

こうして改造された2系列は、特急標識を設置し、京都 - 橿原神宮駅間などで特急車として運行を開始しました。

680系の詳細

680系は、以下の2形式4両で構成されています。

モ680形：橿原神宮駅向きの制御電動車
ク580形（2代目）：京都向きの制御車

車体は、奈良電デハボ1200・1350形の基本設計を継承しています。改造に際しては、固定窓化、乗務員扉の埋め込み、冷房装置の搭載などが行われました。内装もアルミデコラ化され、転換クロスシートが設置されました。

主要機器は、モ680形ではWNドライブなどの主要機器が流用されました。一方、ク580形は台車が交換され、ブレーキも変更されました。冷房化に伴い、電動発電機も搭載されました。

680系の活躍と終焉

1964年10月の運転開始後、京都・橿原線特急は増発を重ねました。1965年3月には、予備特急車であるはずの683系が定期運用に充当されるようになりました。

その後、18000系などの新型特急車が投入され、683系は予備特急車に戻りました。1973年9月には、橿原線の改良工事が完了し、大阪線用特急車が乗り入れ可能になりました。

1974年には、680系は特急車仕様のままで名古屋線に転属し、団体専用車として使用されました。1975年には一般車に格下げされ、マルーンレッド1色の一般車塗装に変更されました。

10年以上に渡って志摩線で運用を続けましたが、老朽化のため1987年に引退しました。

683系の詳細

683系は、以下の3形式3両で構成されています。

モ683形：両運転台付きの制御電動車
モ684形：京都向きの制御電動車
* ク583形：京都向きの制御車

680系とは異なり、冷房化とオール転換クロスシート化は見送られました。車体はほぼそのままで、雨樋の位置変更や車内販売設備、トイレの設置程度に留まりました。

主要機器は、モ683・684については台車が新造されました。電装品は、デハボ1000形由来の機器が搭載されました。

683系の昇圧とその後

1969年に実施された京都・橿原線の架線電圧1,500Vへの昇圧に当たっては、機器更新を伴う昇圧工事が実施されました。編成も組み替えられ、モ684は完全に中間電動車化されました。

昇圧改造後は団体列車用として使用されましたが、稼働率は低く、1972年には一般車への格下げが決定しました。その後、モ683は大阪線の鮮魚列車用へ転用されました。

680系と683系は、短期間ながら京都・橿原線の特急として活躍し、その後の近鉄特急の発展に貢献しました。

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