通関

通関手続き：国際貿易における重要な関門

国際貿易において、貨物を輸出入する際に必要となる手続きが通関です。これは、税関当局に対して貨物の詳細情報を申告し、検査を受け、関税などの税金を納付し、輸出入の許可を得るプロセスです。この許可なく輸出入は完了せず、輸出では船積み、輸入では国内への引き取りができません。手続きを怠ったり、虚偽の申告を行ったりすると密輸となります。

通関手続きの実際：申告から許可まで

通関手続きは複雑で、法律知識が必要なため、通常は通関業者に委託されます。通関業者は財務大臣の許可を受けた専門業者で、通関士を配置し、輸出入申告書類を審査、税関への申告を行います。2021年の通関業法改正により、押印は不要になりました。

輸出申告

輸出者は、輸出する貨物を管轄する税関に輸出申告を行い、審査・検査を経て許可を得ます。2011年の改正以降、申告時点での保税地域への搬入は不要になりましたが、許可後に外国貨物となるため、搬入は必要です。申告には、品名、数量、価格などを記載した輸出申告書と、必要に応じて契約書、仕入書などの書類を提出します。2012年の改正により、仕入書の提出は税関長の判断に委ねられました。

輸入申告

輸入者は、貨物を保税地域に搬入後、管轄税関に輸入申告を行い、審査・検査を経て関税や内国消費税を納付し、許可を得ます。申告には、品名、数量、価格、関税額などを記載した輸入（納税）申告書が必要です。関税法に基づく関税納付申告、輸入時消費税申告も同時に行います。必要に応じて、契約書、仕入書などの書類も提出します。仕入書の提出も税関長の判断に委ねられました。

通関制度の意義と目的

通関制度は、関税の確実な徴収、不正な輸出入の防止、輸出入の実態把握を目的としています。これらの目的を効率的に達成するため、港湾や空港には保税地域が設置され、通関手続き完了まで貨物を一時保管できます。保税運送や保税工場といった特別な保税地域制度もあります。

通関手続きの円滑化を図る制度

通関手続きの迅速化・簡素化のため、様々な制度が設けられています。

通関手続に関する制度

特例輸入申告制度: セキュリティ管理体制が整備された輸入者は、輸入申告と納税申告を分離できます。
予備審査制度: 輸入貨物が日本に到着する前に書類審査を受けられます。
貨物到着即時輸入許可制度: 検査不要とされた貨物は、到着確認後すぐに輸入許可が下ります。
特定輸出者制度: セキュリティ管理体制が整備された輸出者は、審査・検査が軽減され、迅速な船積みを可能にします。

関税に関する制度

事前教示制度: 関税分類、関税率、原産地などについて、事前に税関に問い合わせができます。
関税等の納期限延長制度: 担保提供により、関税納付期限を延長できます。
特恵関税制度: 開発途上国からの輸入品には、低い税率が適用されます。
減免税制度: 一定条件を満たす貨物に対して、関税の一部または全部が免除されます。様々な減免税制度があり、用途や状況に応じて適用されます。

日本の通関の課題と改革

日本の通関は、セキュリティ対策の強化と手続きの簡素化という相反する課題に直面しています。テロ対策の強化のため厳格化が進められる一方、国際物流の効率化のため簡素化も求められています。

近年、AEO制度の導入、ペーパーレス化、24時間365日対応など、通関手続きの迅速化に向けた改革が進められています。NACCS（税関電子情報通信システム）の改善や、ベトナム、ミャンマーへのシステム導入支援もその一環です。2005年以降は、「コンプライアンスと通関手続の迅速化」を旗印に大幅な法令改正が行われ、輸入禁制品の追加、知的財産権対策の強化、輸出許可手続きの簡素化などが実施されました。

しかし、密輸の発生や、手続きの複雑さ、国際的な競争力とのバランスなど、課題は依然として残っています。

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