連邦官報

連邦官報：アメリカ合衆国政府の公式情報源

連邦官報 (Federal Register) は、アメリカ合衆国連邦政府の公式記録であり、政府機関の決定事項や規則、政策に関する情報を掲載する日刊の出版物です。1936年の創刊以来、連邦政府の意思決定の透明性を高める重要な役割を担ってきました。連邦官報事務局が編集し、合衆国政府出版局が印刷・発行しています。

連邦官報の歴史と法的根拠

連邦官報の制度は、1935年の連邦官報法によって確立され、1945年の行政手続法によってさらに強化されました。これらの法律は、連邦政府の規則制定プロセスにおける透明性と国民参加の重要性を明確にしています。

連邦官報の内容

連邦官報には、連邦政府機関に関する多様な情報が掲載されています。主な内容は以下の通りです。

大統領令と大統領宣言: 大統領による重要な政策決定や声明
規則と規制: 連邦政府機関が制定する新たな規則や既存規則の改正
規則案: 規則制定前の意見募集のための案
告示: 公聴会や公開説明会、助成金申請などの告知

連邦官報は、連邦政府の政策決定過程を国民に公開し、国民参加を促進する重要な役割を担っています。掲載された規則案に対しては意見提出が可能です。また、合衆国政府マニュアルは連邦官報の特別編集版として発行されており、連邦政府のプログラムや活動に関する情報を集中的に提供しています。

ただし、連邦議会制定法は連邦官報には掲載されません。これは、アメリカ合衆国では、大統領の署名によって法律が効力を持つため、官報への掲載という手続きがないためです。制定された法律は別途、「slip law」として公表され、後に「Statute at Large」としてまとめられます。

連邦官報の構成

連邦官報は、大きく分けて以下の4つのカテゴリーで構成されています。

1. 大統領文書 (Presidential Documents): 大統領令や大統領宣言など
2. 規則と規制 (Rules and Regulations): 最終的な規則や政策に関する声明
3. 規則案 (Proposed Rules): 新たな規則案や既存規則の改正案
4. 告示 (Notices): 公聴会や公開説明会、助成金申請などの告知

連邦官報の引用方法は、[ボリューム] FR [ページ番号] (日付) の形式です。例えば、「65 FR 741 (2000-10-01)」は、連邦官報第65号、741ページ、2000年10月1日付けの記事を指します。規則案に対する意見募集（Notice of Proposed Rulemaking、NPRM）は、一般市民が政府の政策形成に参加できる機会を提供しています。

連邦官報と連邦規則集

連邦官報に掲載された最終規則は、主題別に再編されて連邦規則集 (Code of Federal Regulations、CFR) に収録されます。CFRは年1回更新され、連邦政府の規則の体系的な集大成となっています。

連邦官報のアクセス方法

連邦官報は、以下のような方法でアクセスできます。

合衆国政府印刷局 (GPO): 紙媒体、マイクロフィッシュ、オンラインで入手可能。オンラインでは1994年以降のものが閲覧可能です。
連邦政府刊行物寄託図書館: 紙媒体やマイクロフィッシュで閲覧可能。
オンラインデータベース: GPO Access、アメリカ国立公文書記録管理局のウェブサイト、Regulations.govなどからアクセス可能。Regulations.govでは、一般市民が規則制定プロセスに参加できます。
商用データベース: Westlaw、LexisNexis、HeinOnlineなど、商用データベースでもアクセス可能です。

連邦官報の利用と意義

連邦官報は膨大な情報量を誇り、年間8万ページ以上に達することもあります。その内容の専門性から、弁護士や法律専門家など限られた専門家によって利用されることが多いです。しかし、連邦政府の活動や政策を知る上で極めて重要な情報源であり、法律関係者だけでなく、研究者や政策立案者にとっても貴重な資料です。

ノーベル経済学賞受賞者ミルトン・フリードマンは、連邦官報のページ数増加を個人の自由の制限の指標として用いるなど、様々な分野で利用されています。また、アマチュア無線愛好家なども、連邦通信委員会の規則変更の時期を調べるために活用しています。

まとめ

連邦官報は、アメリカ合衆国連邦政府の透明性と説明責任を担保する上で不可欠な存在です。その膨大な情報量は、一見アクセスが難しいように思われますが、オンライン化の進展により、誰でも容易にアクセスできるようになっています。今後とも、政府の政策決定過程を理解し、国民参加を促進する上で、重要な役割を果たし続けるでしょう。

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