連雀商人

連雀商人（れんじゃくしょうにん）

連雀商人とは、中世から近世にかけて存在した日本の商人の一種で、主に都市と地方の間を行き来し、物資の流通を担った行商人のことです。「千朶櫃商人（せんだびつしょうにん）」とも呼ばれていました。

概要

室町時代中期以降、京都などの大都市で生産された商品を地方へ運び、地方からは農産物や商品の原材料を都市へ持ち込む行商人が現れました。特に近江商人や伊勢商人といった集団が活発な活動を行い、その形態が各地に広まっていきました。

彼らは「連雀」と呼ばれる背負子に商品や荷物を載せて運んだことから、連雀商人と呼ばれるようになったと言われています。「千朶櫃」も同様に荷物を背負うための道具です。

ただし、「連著」や「連尺」といった表記も見られることから、雀が連なって飛ぶ様子に由来するという説もあり、語源は特定されていません。現在では「連雀」という表記が一般的です。

船舶を使う商人は廻船商人と呼ばれていたため、連雀商人は主に陸路を行商する人々を指します。

歴史

中世の商業においては、都市や寺社の門前町などを除き、行商人による露天市が主流でした。次第に定期的な市場が開かれるようになり、商人も市場を巡回するようになります。

鎌倉時代から行商人は存在していましたが、貨幣経済の発展や街道の整備が進み、地方で仕入れた材料を都市の職人に売り、その生産品を地方で販売するという商業形態が確立した室町時代以降に、その数は増加しました。

単独での移動は危険を伴うため、行商人は集団で移動し、護衛を雇うようになりました。これが連雀商人の始まりです。

横川景三の『小補東遊集』には、京都付近で「運搬人100人以上、護衛60人以上、無数の馬」という大規模な商隊が形成されていた様子が記されています。

戦国時代中期以降、戦国大名が城下町を形成すると、定期的な市が頻繁に開催されるようになり、連雀商人が集まる機会が増えました。そのため、古い城下町には連雀町や連雀小路といった地名が残っています。これらの地域では、領主から任命された商人頭が役銭の徴収などを行っていました。

近世に入り、治安が安定し商品流通が発達すると、都市を中心に店舗を持つ商人が地方にも普及し始めました。これにより、連雀商人は徐々に衰退し、姿を消していきました。江戸時代中期にも行商人は存在しましたが、「連雀商人」という言葉は地名などに残るのみとなりました。

参考文献

坂本太郎監修『日本史小辞典』（1989年、山川出版社）
小和田哲男『戦国の群像』（2009年、学研新書）
* 桑田忠親監修『戦国史事典』（1980年、秋田書店）

もう一度検索