伊勢商人

伊勢商人

伊勢商人は、大坂商人、近江商人と並び、日本三大商人と称される商人集団の一つです。江戸時代、伊勢国（現在の三重県）を本拠地とし、安土桃山時代の16世紀後半から江戸、京（京都）、大坂（大阪）といった主要都市に進出し、全国規模の商売ネットワークを築き上げました。特に、松阪、射和、相可といった地域から、多くの有力な伊勢商人が輩出されました。

概要

伊勢商人の代表格として知られるのは、江戸に呉服店「越後屋」を開業し、三井財閥の基礎を築いた三井高利です。

伊勢商人の主な屋号には、「伊勢屋」や「丹波屋」などがあります。江戸においては、伝馬町界隈に店を構えることが多かったようです。江戸では伊勢出身の商人が非常に多く、「江戸名物は伊勢屋、稲荷に犬の糞」という言葉が残るほどでした。

伊勢商人のルーツは、戦国時代中期に日本へ流入してきた木綿を全国に売り歩いたことにあります（本居宣長の実家である小津家もその一例です）。当時、木綿は高級品であったため、その販売によって得た利益が、彼らを豪商へと押し上げました。木綿や呉服の他にも、材木・紙・酒などを扱う伊勢商人がおり、金融業や両替商に転身する者もいました。

また、「伊勢おしろい」も、伊勢商人が取り扱う主要な商品の一つでした。

江戸時代前期の寛永年間から中期にあたる元禄年間にかけて、伊勢商人は相次いで江戸、京、大坂に出店しました。これは、江戸幕府による支配体制が安定し、経済制度が整備されたことによる影響が大きいと考えられます。

伊勢商人の特徴として、手堅い商売ぶりが挙げられます。その様子は「近江泥棒、伊勢乞食」という言葉にも表れています（近江商人は欲深く、伊勢商人はまるで乞食のように出納に細かいという意味）。また、伊勢商人独自の優れた情報ネットワークも特筆すべき点です。特にお伊勢参りに向かう人々が、安濃津や松阪を経由したため、彼らから諸国の情報を収集することができ、その情報が伊勢商人の発展に繋がったと考えられています。

「伊勢乞食」の語源には異説もあり、『今昔物語集』や『人国記』には伊勢の人が親を欺いて財産を奪うという記述が見られますが、前者は作者の主観に基づくものであり、後者は諸国人への皮肉や誹謗中傷が多く含まれる書物であるため、根拠としては不適切です。一方で、「伊勢子正直」とも言われ、伊勢出身の小僧は正直者として重宝されました。

伊勢商人の流れを汲むとされる主な企業

イオン
伊藤ハム
岡三証券
小津産業
国分グループ本社
東洋紡
にんべん
NEZASホールディングス
百五銀行
三井
三越
ライフコーポレーション
* 丁子屋百貨店

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