進入・着陸試験

進入・着陸試験（ALT）とは

進入・着陸試験（Approach and Landing Tests、ALT）は、1977年にスペースシャトル試験機エンタープライズを用いて行われた、大気圏内での飛行特性を評価するための重要な試験です。この試験は、後のスペースシャトル計画の成功に不可欠な役割を果たしました。

試験の背景

1960年代後半から、宇宙飛行のコスト削減を目指し、再使用型宇宙往還機の開発が検討されました。その結果、再使用可能なスペースプレーンと、使い捨て型の外部燃料タンク、再使用可能な固体燃料補助ロケットを組み合わせた設計が採用されました。

スペースシャトルの機体（オービター）の1号機として、ノースアメリカン・ロックウェル（後のロックウェル・インターナショナル）によって建造されたのが「エンタープライズ」です。当初は「コンスティテューション」と命名される予定でしたが、テレビドラマ『スタートレック』のファンからの要望により、「エンタープライズ」と改名されました。

テストプログラムの内容

NASAは、スペースシャトル計画を推進するにあたり、「エンタープライズ」を用いて、オービターのすべてのシステムが設計通りに機能することを確認するための広範囲な試験を実施しました。これには、飛行特性を試験するだけでなく、発射台のシステムと手順の地上試験も含まれています。

1977年1月、「エンタープライズ」はロックウェル社の工場からエドワーズ空軍基地のドライデン飛行研究センターまで陸路で運ばれ、飛行試験が開始されました。

試験は、大きく分けて以下の3つの段階で構成されています。

1. タキシングテスト：シャトル輸送機（SCA）にオービターを搭載した状態で滑走路を走行し、SCAのタキシング特性を検証しました。
2. 係留飛行：SCAとオービターを結合した状態で飛行し、飛行特性を調べました。係留飛行は、さらに不活性フライトとアクティブ・フライトに分けられます。
不活性フライト：オービターの電源を切った状態で、SCAとの結合状態での飛行特性を試験しました。
アクティブ・フライト：オービターに電源を供給し、乗組員が搭乗した状態で、SCAからの分離に必要なプロファイルを決定することを目的としました。
3. 自由飛行：SCAに結合されたエンタープライズを発射高度まで運び、切り離した後、滑空してエドワーズ空軍基地の滑走路に着陸させました。このテストでは、宇宙軌道から帰還する際の進入・着陸プロファイルにおけるオービターの飛行特性を調べました。

試験結果とその後

1977年8月から10月にかけて、合計5回の自由飛行が行われました。初期の飛行では、空気抵抗を減らすためにエンタープライズの尾部にテールコーンが装着されましたが、後の飛行ではダミーのメインエンジンとOSMポッドが装着され、実際の運用に近い構成で試験が行われました。

試験後、「エンタープライズ」は、スペースシャトル打ち上げ直前を模した試験に供され、構造的な応答や発射手順の確認が行われました。その後、ケネディ宇宙センターに運ばれ、発射台までの輸送手順の試験が行われました。

試験の意義

進入・着陸試験は、スペースシャトル計画の実現に向けて、オービターの飛行特性や運用手順を検証するための重要なステップでした。この試験を通して得られたデータや経験は、後のスペースシャトル計画の成功に大きく貢献しました。

エンタープライズによる一連の試験から3年半後の1981年4月、スペースシャトルは初の宇宙飛行を成功させ、その歴史的な幕を開けました。

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