遊園地前駅 (台湾)

遊園地前駅（ゆうえんちまええき）は、日本統治時代の台湾、台中州大屯郡烏日庄（現在の台中市烏日区）に存在した台湾総督府鉄道台中線の駅です。1926年（大正15年）に台湾で2番目に開設されたゴルフ場である大肚山ゴルフリンク（大肚山高爾夫球場）と、開設が予定されていた大肚山遊園地へのアクセス駅として、1934年（昭和9年）12月1日に設置されました。

当時、この地域は観光開発のポテンシャルを秘めており、ゴルフ場はその先駆けとしての役割を担っていました。しかし、計画されていた大肚山遊園地は、その後の情勢の変化により実現することはありませんでした。遊園地計画が頓挫した結果、その土地は軍事用途に転用され、戦後には成功嶺と呼ばれる軍事施設となりました。この歴史的な変遷は、遊園地前駅が計画のみで終わった遊園地を象徴する存在であることを物語っています。

駅自体は、ガソリンカー専用の小規模な駅として機能していました。開設当初は、DR2300型気動車などのガソリンカーが主に停車していましたが、1942年（昭和17年）に太平洋戦争が激化すると、ガソリン不足の影響でガソリンカーの運行が停止され、駅の利用も大きく制限されることとなりました。

駅の構造についての詳細は、資料が乏しく不明な点が多いです。しかし、当時の台湾の鉄道駅の一般的な構造から推測すると、簡素なホームと待合所程度の施設があったと考えられます。

廃止前の駅周辺には、大肚山ゴルフリンク（大肚山高爾夫球場）が北方に位置しており、駅はこのゴルフ場へのアクセスに利用されていました。しかし、遊園地計画の頓挫や、戦時中の交通事情の変化により、駅の利用は次第に減少していったと考えられます。

隣の駅は、台中線において、烏日駅 - 学田駅(廃駅) - 遊園地前駅(廃駅) - 王田駅（現、成功駅）という位置関係にありました。遊園地前駅は、他の駅と比較しても小規模な駅であり、その存在は地域住民にとって、ゴルフ場や未完の遊園地計画を思い起こさせる場所であったと考えられます。

現在、遊園地前駅の跡地は、具体的な場所や痕跡がほとんど残されておらず、その歴史を語る上で、数少ない記録や証言が重要な役割を果たしています。

このように、遊園地前駅は、台湾の歴史の一端を担う駅として、その短い生涯を終えました。遊園地計画という夢の跡であり、戦時下の台湾の状況を物語る遺産でもあります。

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