遊女評判記

遊女評判記は、江戸時代初期から中期にかけて刊行された、遊女の評判を記した書籍群の総称です。そのルーツは、仮名草子の中に遊廓の様子や遊女に関する情報を掲載したものが現れたことに始まります。

特に、明暦元年（1655年）に刊行された『桃源集』は、遊女一人ひとりの評判を詳細に記した初期の代表的な遊女評判記として知られています。この書物では、京都の嶋原遊廓に所属する高級遊女である太夫や天神といった位の高い遊女、計53名が取り上げられ、彼女たちの容姿や芸、性格、客あしらいなどが詳細に記述されました。

遊女評判記は、宝暦年間（1751年～1763年）頃まで盛んに刊行されました。しかし、吉原遊廓において太夫という位の遊女が姿を消していくにつれて、遊女評判記の刊行も徐々に途絶えていきました。これは、遊女の位階制度の変化や、遊廓における遊女の役割の変化などが影響していると考えられています。

遊女評判記は、当時の遊廓の様子や遊女たちの生活、文化を知る上で貴重な資料となっています。また、当時の人々の美意識や価値観、遊女に対する関心などを垣間見ることができる点でも興味深い資料です。

関連する書籍として、遊女評判記の内容をより深く理解するための参考資料がいくつか存在します。

吉原細見：吉原遊廓の遊女や遊廓の様子を詳細に記した書物。
役者評判記：歌舞伎役者の評判を記した書物で、遊女評判記と並んで、当時の芸能文化を知る上で重要な資料。

参考文献として、以下のような書籍が挙げられます。

『江戸名物評判記案内』（中野三敏、岩波新書）
『近世初期遊女評判記集』（小野晋、古典文庫、1965年）
『近世文学資料類従. 仮名草子編』34-36巻（勉誠社、1978-1979年）
『初期浮世草子年表・近世遊女評判記年表』（野間光辰、青裳堂書店、1984年）

これらの文献を参照することで、遊女評判記に関する理解を深めることができます。

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