遠藤博也

遠藤 博也（えんどう ひろや）

日本の法学者。1936年6月10日、徳島市に生まれる。行政法を専門とし、東京大学にて法学博士の学位を取得後、北海道大学で長年にわたり教育・研究活動に従事しました。

経歴

東京大学法学部を1960年3月に卒業。その後、同大学大学院法学政治学研究科に進み、1965年3月には博士課程を単位取得の上満期退学しました。法学研究を深めるにあたり、当初は田中二郎教授に師事しましたが、田中教授の最高裁判事就任に伴い、その後は雄川一郎教授のもとで研鑽を積みました。1966年3月には、東京大学より法学博士の学位を授与されました。学位論文の題目は「行政行為の無効と取消 -機能論的見地からする瑕疵論の再検討-」であり、これは行政法学における重要な研究成果として位置づけられています。

大学院修了後、1966年2月には北海道大学法学部助教授に就任。教育者、研究者としてのキャリアをスタートさせました。1970年8月には同法学部教授に昇任し、行政法研究の第一人者として活躍しました。大学運営にも深く関与し、1979年8月から1982年12月まで北海道大学評議員、また1982年12月から1984年12月にかけては北海道大学法学部長および大学院法学研究科長を併任し、大学の発展に貢献しました。

研究と業績

遠藤博也氏の研究は、行政法学の広範な領域に及びます。特に、博士論文で扱った行政行為の瑕疵論においては、機能論的視点から無効と取消しの関係を再検討し、その後の学説に大きな影響を与えました。また、都市計画法、計画行政法といった分野にも早くから着目し、実務にも通じる研究を展開しました。国家補償法に関する研究も重要な業績の一つであり、詳細な論述を公刊しています。

その研究成果は多くの著作として結実しています。代表的な単著として、『行政行為の無効と取消 機能論的見地からする瑕疵論の再検討』、『都市計画法50講』、『計画行政法』、『講話行政法入門』、『国家補償法』（上・中巻）、『行政法スケッチ』、『実定行政法』などがあります。さらに、没後には生前の研究をまとめた『行政法学の方法と対象』、『行政過程論・計画行政法』、『行政救済法』、『国家論の研究』といった著作集が刊行され、その学術的遺産が現代に伝えられています。

また、多数の研究者との共編著も手がけ、『行政法入門』、『教材 行政法判例』、『行政法学の基礎知識』、『公法と経済法の諸問題』、『行政救済法』、『総論』など、教育や研究の基盤となる書籍の刊行にも尽力しました。

学会活動と門下生

学外においても活発に活動し、行政法学の発展に貢献しました。1973年10月からは日本土地法学会理事を、1986年4月からは日本計画行政学会理事を、そして1989年10月からは日本公法学会理事を務め、各学会の運営や研究交流の中心的な役割を担いました。これらの理事職は、1992年4月に逝去するまで続けられました。

北海道大学では多くの学生、研究者を指導し、後進の育成に情熱を注ぎました。その門下からは、大西有二、倉田聡、下井康史、福士明、石黒匡人といった、後に大学教授として活躍する多くの優れた法学者が輩出されています。教育者としても行政法学界に多大な影響を与えた人物といえます。

遠藤博也氏は1992年4月6日に55歳で永眠しましたが、その独創的な研究と教育への貢献は、日本の行政法学史において重要な足跡を残しています。

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