雄川一郎

雄川 一郎（おがわ いちろう）は、1920年に生まれ、1985年2月にその生涯を閉じた日本の著名な法学者です。特に行政法を専門分野とし、長年にわたり東京大学で教鞭を執り、同大学の名誉教授の称号を授与されました。

彼は兵庫県で育ち、旧制教育を経て、1943年に東京帝国大学法学部を卒業しました。卒業後、母校である東京大学の教員となり、助教授としてキャリアを開始します。行政法学の研究・教育に邁進し、1957年には教授に昇任しました。

雄川氏の学術的業績の中でも特筆されるのは、統治行為論に関する研究です。この分野における深い洞察と貢献により、1962年には「統治行為論」と題する論文で法学博士の学位を取得しました。教授として、彼は次世代の法学者育成にも力を注ぎ、小早川光郎氏、宇賀克也氏、遠藤博也氏、阿部泰隆氏をはじめとする多くの優れた研究者を育て上げました。

1981年、雄川氏は東京大学を定年により退官しました。長年の功績を称えられ、東京大学名誉教授の称号が贈られました。退官後も研究・教育への情熱は衰えず、成蹊大学の教授として新たな活動の場を得ました。しかし、残念ながら成蹊大学に在職中に逝去しました。

その学術的遺産は、複数の著作や論文集として今日に伝えられています。主な著書としては、没後の1986年に有斐閣から刊行された『行政の法理 雄川一郎論文集第1巻』と『行政争訟の理論 雄川一郎論文集第2巻』があります。これらは、彼の行政法に関する主要な論文や研究成果をまとめたものです。

また、教育活動の一環として、共編著による教材や研究書も多く手掛けました。例えば、田中二郎氏と共編した『行政法演習』（有斐閣、1963年）や、『租税法』（第一法規出版、1979年、租税法基本判例叢書）、山内一夫氏との共編による『演習行政法』（良書普及会、1972年）などがあり、これらの著作は当時の学生や研究者に広く利用されました。

雄川一郎氏の行政法学における貢献とその影響力の大きさは、没後に編まれた記念論集からも伺い知ることができます。1990年には成田頼明氏の編集により『行政法の諸問題 雄川一郎先生献呈論集』（有斐閣）が刊行され、多くの研究者が彼の業績を称え、関連する論考を寄せています。また、没後すぐに刊行された「成蹊法学」の追悼号には、彼の詳細な年譜および著作目録が掲載されており、研究者にとって貴重な資料となっています。

日本の行政法学界において、雄川一郎氏が果たした役割と残した業績は非常に大きく、その研究成果と教育者としての功績は、今日に至るまで高く評価され続けています。

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