遮光幕

遮光幕とは

遮光幕は、光を遮るための幕の通称です。ここでは、特に鉄道車両における遮光幕について詳しく解説します。

鉄道車両における遮光幕

鉄道車両では、夜間やトンネル内などで乗務員室（運転室）背面の遮光幕が閉められます。これは、客室内の照明がフロントガラスに映り込み、運転士が前方を注視するのを妨げるためです。乗用車を夜間にルームライトを点けたまま運転する状況と似ています。

遮光幕の形状

遮光幕の形状は、ロールスクリーン式が一般的ですが、他にも様々な種類があります。

ロールスクリーン式: 最も一般的なタイプで、上げ下げして使用します。
遮光板: 乗務員室背面ガラス下から引き出す板状の遮光幕です。（京成電鉄の一部車両、京浜急行電鉄800形・2000形など）
* プリーツカーテン: 横引きのプリーツカーテンを使用する例もあります。（国鉄キハ38形[[気動車]]、JR東日本255系電車など）

遮光幕の操作方法

手動で上げ下げするタイプが一般的ですが、一部の車両では運転席のスイッチ操作で遮光幕を操作できます。（阪急電鉄、近鉄電車の一部車両など）

遮光幕の色

遮光幕の色は、事業者によって異なります。客室側を白色や淡色、または内装の化粧板と同系色にする場合や、乗務員室側を黒色や茶色にする場合、表裏一体でグレーを用いる場合などがあります。

遮光幕の使用場面

運転士が列車を運転する場合で遮光幕の使用が許される場面は、多くの事業者で限定されています。具体的には、早朝、夜間、悪天候時、地下鉄、トンネルなど、自然光が差し込まず客室内の光が反射しやすい区間です。それ以外の時間帯は、原則として全面開放し、不必要に使用することは禁じられています。

これは、乗客に対して業務内容を公開し、乗客側から見ても前方の風景が見えるようにすることで、精神衛生上の良い効果をもたらすためです。

運転士の意見

しかし、運転士の中には、安全輸送・定時運転の観点から、客室からの視線がない方が集中できるという意見もあります。労働組合からの要求として、昼間の地上区間でも遮光幕を閉めることを求める声もあります。実際に、一部の鉄道事業者では、昼間でも遮光幕を閉めて運転している例や、運転席背面窓を省略した車両を新製する例があります。

地上区間から地下区間への進入

地上区間から地下区間に入る場合、通常は手前の駅で停車中に遮光幕を閉めます。例えば、東急東横線では、東白楽駅または代官山駅停車中に遮光幕を閉めます。

各事業者の取り組み

一部の事業者では、スモークフィルムや特殊な遮光ガラスを使用し、夜間や地下区間でも遮光幕の使用を不要としています。また、運転席側の遮光幕だけを使用し、助士席側の幕は開放する事業者や、助士席側に幕が無い車両も増えています。

遮光幕に関する問題点

国鉄時代には、日中でも遮光幕を閉めたまま乗務員が漫画を読んだり喫煙をしたりするなど、本来の目的から逸脱した使用が見られました。国鉄分割民営化後、JR各社はこの問題解決に取り組み、現在では遮光幕をできるだけ開放して乗務するという方針となっています。

事故発生時の影響

各種事故などの発生時には、客室から前面が見えていた場合、見えない場合より目撃者の確保の観点から有利です。また、車内における犯罪・迷惑行為などの発生時において、車掌が遮光幕を濫用し、客室内の注視・監視を怠るのは、職務上問題があると言えます。

その他の使用例

車掌が現金などを査算する場合に一時的に遮光幕を用いることがありますが、これは防犯の観点から正規の取り扱いとされています。また、早朝・夜間・地下駅での折り返し時などに、車掌がカーテンを閉めることがあります。

展望重視の車両

設計時から客室からの展望を重視している車両（伊豆急行2100系[[電車]]など）は、遮光幕自体が設置されていない場合があります。

海外の鉄道車両

日本で製造された諸外国向け鉄道車両では、新製当初から客室と乗務員室の間に仕切り窓がない場合や、窓ガラスがあっても現地で遮光幕が終日下げられている場合が多いです。

バス車両における遮光幕

夜行高速バスでは、運転席の後ろにカーテンを設置し、室内の光がフロントガラスに映らないようにしています。夜間走行中にカーテンを全閉するのは、道路上の明かりが客室に入り込み、安眠妨害になるのを防ぐためでもあります。

旅客船における遮光幕

旅客船においては、夜間航行中は、最前部の部屋の前方の窓の遮光幕として、カーテン等が閉められます。最前部にラウンジを設置している船もありますが、ラウンジのカーテン（遮光幕）も閉鎖されます。

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