遮那王義経

『遮那王義経』は、沢田ひろふみによる日本の漫画作品で、『月刊少年マガジン』（講談社）にて2000年12月号から2007年6月号まで連載されました。全22巻の単行本として刊行され、平安時代末期から鎌倉時代を舞台とした歴史漫画として人気を博しました。2004年には、第28回講談社漫画賞少年部門を受賞しています。

その後、『月刊少年マガジン』2007年8月号より『遮那王義経源平の合戦』と改題され、源平合戦以降の物語が描かれました。このシリーズは、『月刊少年マガジン』2015年5月号にて完結しています。

粗筋

物語は、とある神社の床下から発見された古文書から始まります。その古文書には、牛若丸が16歳で死去したという驚くべき事実が記されていました。これは、これまで知られることのなかった「もう一つの義経伝説」の幕開けとなります。

時は平安時代末期、平家が全盛を誇る時代。旅芸人の漂太（ひょうた）は、牛若丸と瓜二つの容姿を持つことから、その身代わりを務めることになります。この出会いが、漂太に数奇な運命をもたらすこととなるのです。

主要登場人物

源義経（漂太、遮那王）

本作の主人公。彼は実は源義朝の九男ではなく、捨て子であり、軒下一座というその日暮らしの芸者の一員でした。本名は漂太。非常に身軽で、子供ながらに素晴らしい軽業を披露していました。背が低いことを指摘されると激怒する一面も。幼少期の一人称は「オイラ」でしたが、成長後は「オレ」に変わっています。

子供の頃は破天荒で自由気ままな性格でしたが、成長するにつれて、牛若丸と同様に難しい書物も読めるようになり、礼儀も身につけました。しかし、明るく快活な性格は変わらず、多くの人々から慕われています。牛若丸の死後も、彼のことを「無二の親友」として大切に想っています。

牛若丸と瓜二つの外見であったことから、常盤御前に見出され、影武者として藤原長成の家に迎え入れられました。漂太自身もこの役割を快く引き受け、そこで様々な騒動を起こしつつも、牛若丸と友情を育み、常盤御前や藤原長成とは本当の親子のような関係を築いていきます。

後に、平清盛によって鞍馬寺に追放される形で稚児となり、「遮那王」の名を与えられます。寺での生活では、平氏からの刺客に命を狙われながらも、機転を利かせて困難を乗り越えていきます。そして、武蔵坊弁慶や平徳子といった重要な人物と出会います。

牛若丸が病に倒れると、彼の平氏打倒の意志を継ぎ、鞍馬寺を脱走。藤原長成と親戚関係にある奥州藤原氏の棟梁、藤原秀衡を頼るため、金売り吉次に連れられ、弁慶と共に平泉へと向かいます。

その途上で、「義経」と自ら名乗り元服。伊豆に立ち寄り、蛭ヶ小島に流されていた兄・源頼朝を訪ねます。平泉では、平家の追っ手や清原氏の残党との戦いに巻き込まれながらも、藤原基成の屋敷で穏やかな日々を過ごし、佐藤兄弟や藤原泰衡、国衡らと交流を深めます。平泉を「故郷」と感じるほどに愛着を持つようになります。

牛若丸

源義朝の九男。「本物」の源氏であり、本来なら平氏打倒のために立ち上がるはずでした。病弱でしたが、頭脳明晰で兵法書を読み漁っていました。自らの命が長くないことを悟っており、7歳まで平氏から身を隠すために屋敷から一歩も出ることができませんでした。しかし、漂太との出会いを通じて、束の間の楽しい時間を過ごします。

武蔵坊弁慶

義経の最初の家臣。「忠の者」として知られています。鞍馬寺での修行時代に出会い、当初は鬼若丸という名前で恐れられていました。義経との出会いをきっかけに、心優しい性格を取り戻し、義経への忠義を誓います。

伊勢三郎能盛

通称は盛。「勇の者」。山賊に身をやつしていましたが、義経の器量に惚れ込み家臣となります。口が悪く、主君である義経に対してもタメ口ですが、忠義心は人一倍強い人物です。

佐藤継信

「仁の者」。奥州屈指の名門、佐藤家の嫡男。温厚な性格ですが、主君である藤原秀衡の悪口を言われると激昂するほどの忠誠心を持っています。義経とは奥州入りの時から知り合い、その器量に心服するようになります。

佐藤忠信

「信の者」。継信の弟。弁慶と互角の怪力の持ち主で、兄と同様に義経に忠誠を誓っています。兄に対する劣等感を抱きつつも、義経との出会いを通じて克服していきます。

峨山直平

「智の者」。元は源氏側でしたが、生き残るために平氏へと鞍替えした過去を持つ男。牛若丸（漂太）の資質を見抜き、自らの命を捧げることを誓います。

鷲尾三郎

通称ワッシー。元土豪の武士で、中性的な容姿を持つ。弓術に長けており、義経に惚れて家臣となります。義経が偽物だと知っても、その絆に喜びを感じています。

りん（静御前）

本作のヒロイン。軒下一座の一員で、後に都一の白拍子、静御前となります。義経（漂太）への思いは、兄以上のものであるとされています。

平家一門

平清盛

平氏の棟梁。武家でありながら強大な権力を手中に収め、「平氏にあらずんば人にあらず」と呼ばれるほどの時代を築き上げました。牛若丸を屋敷に幽閉した張本人でもあります。

源氏一門

源頼朝

源義朝の三男。平治の乱に参加したため伊豆に流罪となりましたが、平家打倒の志を抱き、挙兵します。義経とは兄弟でありながら、複雑な関係を築いていきます。

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