遺書 白い少女

遺書 白い少女

1976年、日本の映画界に一つの青春映画が誕生しました。作家・落合恵子の同名小説を原作とする『遺書 白い少女』は、松竹とサンミュージックの提携によって製作され、名匠・中村登が監督を務めた作品です。主演には、アイドルとして絶頂期にあった桜田淳子が起用され、彼女にとってこれが単独主演を務めた二作目の映画となりました。相手役には、当時テレビドラマ『俺たちの旅』での演技で一躍人気者となっていた田中健が抜擢されています。

企画背景とキャスティング

本作の企画背景には、当時の映画界で絶大な人気を誇っていた東宝の山口百恵・三浦友和コンビに対抗すべく、松竹独自の新たな「フレッシュコンビ」として桜田淳子と田中健を売り出そうとする意図がありました。両名のスターパワーを組み合わせることで、新たな観客層を開拓しようという松竹の戦略が見て取れます。しかし、残念ながらこの両名がスクリーンで再び顔を合わせる機会は、本作以降実現しませんでした。出演者には、主演の桜田淳子（中原亜砂子役）、相手役の田中健（二宮峯雄役）のほか、実力派の市原悦子（中原美加役）、長門裕之（土屋医師役）、吉行和子（野田婦長役）、木村功（二宮康明役）といったベテラン俳優陣が脇を固めています。また、後にアイドルとしてブレイクする大場久美子が、まだ無名だった頃に「髪の長い少女」として端役で出演している点も、後年の視点からは興味深い要素と言えるでしょう。

スタッフ

製作陣としては、製作を樋口清が、企画をサンミュージック社長の相澤秀禎が担当しました。脚本は八木保太郎、音楽は森田公一が手がけ、映像美を担った撮影は竹村博が担当しました。

監督：中村登
製作：樋口清
企画：相澤秀禎
脚本：八木保太郎
音楽：森田公一
撮影：竹村博

主題歌とサウンドトラック

本作の主題歌は、主演の桜田淳子が歌う「白い少女のバラード」です。作詞は阿久悠、作曲は森田公一、編曲は竜崎孝路という、当時の人気音楽家が集結して制作されました。この曲は、1976年の桜田淳子のヒットシングル「夏にご用心」のB面曲としても収録されました。また、本作のオリジナル・サウンドトラック盤も桜田淳子の名義でビクター音楽産業から発売されています。

製作発表会見

本作の製作に先立ち、1976年2月6日には、日比谷公園に位置する松本楼にて製作発表会見が開かれました。会見には、主演の桜田淳子、メガホンをとる中村登監督、そして企画の中心となったサンミュージック代表の相澤秀禎氏が出席し、メディアに向けて作品の概要が説明されました。この場で、桜田淳子は映画への意気込みとして「中村先生にしごいていただいて、多くの方に感動を起こす仕事をしたい」と語りました。一方、中村監督は17歳の少女の物語を手がけることへの率直な思いを述べつつ、「ヒロインの性格をきめ細かく描きたい」「単なる少女の純愛ものではなく、しっかりしたものにしたい」と、本作が描くテーマへの深いこだわりを示しました。会見では、市原悦子、内藤武敏、吉行和子といった主要な出演者の予定が発表され、相手役の田中健については後日発表されることが伝えられました。また、撮影は同年の2月16日にクランクインし、主に軽井沢でロケが行われること、そして3月19日にクランクアップする予定であることも明らかにされました。

ロケ地と同時上映

撮影は、都内や軽井沢を中心に、浅間山や遠く離れたグアム島など、多岐にわたるロケーションで行われました。

本作は、中村雅俊主演、斎藤耕一監督による映画『凍河』と同時上映されました。

『遺書 白い少女』は、当時のトップアイドルと人気俳優の共演に加え、ベテラン監督と実力派キャストが脇を固めた、1970年代の日本映画界における青春ドラマの一例として記憶されています。

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