那珂川

那珂川：関東随一の清流とその歴史、そして未来

那珂川は、栃木県那須郡那須町の那須岳山麓を源とし、茨城県を流れ太平洋に注ぐ一級河川です。関東地方第3位の長さを誇り、古くから人々の生活と深く関わり、豊かな自然と歴史を育んできました。上流部は日光国立公園、中流域は那珂川県立自然公園に指定されており、その清流は関東随一と称えられています。

歴史と文化

江戸時代にはサケの遡上が盛んで、捕れたサケは水戸藩への献上品として珍重されました。現在も初夏には、アユ釣りが盛んな観光地として知られています。那珂川河畔には栃木県水産試験場と、国内有数の規模を誇る栃木県なかがわ水遊園があり、淡水魚の研究と普及に貢献しています。河口付近の那珂湊漁港には、活気あふれる那珂湊おさかな市場があり、観光客で賑わっています。支流の涸沼はニシンの南限としても知られ、多様な生物が生息する貴重な水域です。

那珂川の名称の由来は諸説あり、定説は確立していません。『常陸国風土記』には「粟河」、『万葉集』には「中」と記されています。地理的には茨城郡と久慈郡の中間を流れることから名付けられたとする説や、那珂郷に由来する説などがあります。

地理と自然

那珂川は那須火山帯の南端部を源流とし、蛇行しながら南東方向へ流れます。上流部は渓谷を成し、那須野が原の降雨を集めながら徐々に川幅を広げます。中流域では箒川、荒川といった主要な支流と合流し、茨城県に入ると流れを南東へ変え、水戸市を経て太平洋に注ぎます。

那珂川流域には、板室[[温泉]]、那須温泉郷、塩原[[温泉郷]]など多くの温泉が点在し、古くから温泉地としても栄えてきました。また、流域は古来より穀倉地帯として知られ、水田が広がる風景が広がっています。水系には涸沼や千波湖などの天然湖も存在します。御前山から水戸市にかけては河岸段丘が発達しており、特徴的な地形を形成しています。

那珂川開発史：治水、利水、そして環境保全

那珂川の開発は江戸時代から本格化しました。水戸藩は、治水と灌漑を目的とした用水路の建設を進め、備前堀や小場江用水路などが整備され、農業用水として重要な役割を果たしました。明治時代には、那須野ヶ原の開拓に伴い、那珂川からの導水による大規模な灌漑事業である那須疏水事業が実施されました。これは安積疏水、琵琶湖疏水と並ぶ「日本三大疏水」の一つに数えられています。

一方、洪水対策も重要な課題でした。明治以降、人口増加に伴い低地への居住も増え、水害の被害も深刻化しました。昭和初期以降、国を挙げての治水事業が展開され、堤防整備や多目的ダムの建設などが進められました。しかし、昭和61年8月豪雨や平成10年8月末豪雨などの大規模な水害も発生し、現在もなお、治水事業は継続されています。

利水事業としては、農業用水路の整備に加え、上水道や工業用水道の確保も進められています。深山ダムや板室ダム、藤井川ダムなどの多目的ダムは、農業用水、上水道、発電などに利用されています。また、揚水発電所も建設され、電力供給にも貢献しています。

近年は、水質汚濁対策も重要な課題となっています。水戸市では、下水道整備の遅れから河川への汚水流入が問題視され、千波湖浄化事業や霞ヶ浦導水事業などが実施されました。これらの事業により、水質改善に一定の成果が得られていますが、依然として課題は残されています。

那珂川と未来

那珂川は、豊かな自然と歴史、そして人々の生活と深く関わってきた河川です。これからも、治水、利水、環境保全のバランスを考慮しながら、持続可能な河川管理が求められています。そのために、関係者間の連携、そして住民一人ひとりの意識改革が不可欠です。那珂川の未来は、私たちの手によって作られていくのです。

主要支流

箒川
荒川
逆川
緒川
藤井川
桜川
* 涸沼川

主要河川施設

那珂川水系には、多数のダム、用水路、橋梁などが存在します。特に、揚水発電所は、那珂川水系の大きな特徴の一つです。

もう一度検索