邪悪になるな

「邪悪になるな」とは何か

「邪悪になるな」（Don't be evil）は、かつてGoogleの非公式なモットーとして知られていた言葉です。Googleの企業行動規範に登場し、その企業文化や倫理観を象徴する言葉として、広く認識されていました。しかし、企業としての成長や社会的な変化に伴い、この言葉の解釈や意味合いも変化してきました。

概要

「邪悪になるな」は、2015年頃までGoogleの非公式な社是として用いられていました。しかし、GoogleがAlphabetというコングロマリット企業に再編された際、Alphabetの行動規範には「正しいことをせよ」（Do the right thing）という新たなモットーが掲げられました。

元の「邪悪になるな」は、Googleの行動規範には残っているものの、序文からは削除され、現在は最後の結びの文で引用される形になっています。また、「Googleが掲げる10の事実」には、「悪事を働かなくてもお金は稼げる」という、このモットーに近いポリシーも存在しています。

歴史

この言葉の初出は、1999年から2001年の間とされています。Google社員のポール・ブックハイトが社内会議で発言したか、技術者のアミット・パテルが提案したとされています。ブックハイトは、このスローガンを「他社を少し揶揄したもの」と説明し、一度採用したら変更しにくいものにしたかったと述べています。

Googleの公式企業理念にはこの言葉は含まれていませんが、2004年の株式公開時の目論見書には記載されていました。また、「邪悪なことはしない」（Do no evil）と誤って表記されることもあります。

2018年4月には、Googleの行動規範の序文が変更され、モットーは最後の行で言及されるようになりました。また、2019年の香港民主化デモに対する治安当局の弾圧を非難する声明にもこの言葉が含まれており、Google社員の信念として強調されました。

解釈

Googleの創業者であるラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンは、「邪悪になるな」の文化が利益相反を禁止し、客観性と偏見の欠如を求めるものだと主張しました。また、初期のGoogleは検索結果と広告を明確に分離することを意図していました。しかし、検索結果とスポンサーリンクの区別が法律で義務付けられたため、この点はもはや特筆すべき点ではなくなりました。

一部の専門家は、Googleがこのモットーを放棄すべきだと主張しました。また、エリック・シュミットは、当初このモットーを「最も愚かなルールだと思った」と述べていますが、後にその価値を認識するようになったと語っています。しかし、ジャーナリストは、Googleが「邪悪」とみなすものをどのように定義しているのか疑問を呈しています。また、Googleの「What We Believe」ページでは、このモットーが慎重に言い換えられており、元の絶対的な命令形とは意味合いが異なっているという指摘もあります。

批判

Googleを批判する文脈では、このモットーが否定的に用いられることが多くあります。例えば、IT系ビジネス雑誌『InfoWorld』は、「Googleは悪か？」という記事を掲載しました。また、GoogleがGoogle+のアカウントを通じて「すべてのサービスでユーザーの追跡を普遍的に行う」と発表した際には、「Googleが破った約束」として、このモットーに対する反発が起こりました。

さらに、主要なソーシャルネットワークの技術者は、Google+のコンテンツが意図的に検索上位に表示されるのを防ぐためのブラウザ用ブックマークレット「Do n't be evil」を共同開発しました。英国公会計委員長は、Googleが租税回避を行っているとして「悪者」と名指しで非難し、イギリス法人の代表に「あなたは悪事をなしていると思う」と批判しました。

アメリカの新聞は、「Googleの最近の動きは、検索の巨人としてのモットーを裏切っている」と報じました。また、アメリカ国防総省との軍事技術開発協力や中国本土への再進出計画が明らかになった際には、「Don't be evil」の精神に反するとして従業員からの批判が相次ぎました。従業員の団結を呼びかける際に、「Don't be evil」が旗印として用いられることもあります。

まとめ

「邪悪になるな」は、Googleの企業文化を象徴する言葉として、多くの人々に知られています。しかし、企業の成長や社会の変化に伴い、この言葉の意味合いや解釈は変化し、批判の対象となることもありました。Googleが掲げてきた倫理観や企業理念が、社会の中でどのように受け止められているかを理解する上で、重要なキーワードと言えるでしょう。

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