郁久閭歩鹿真

郁久閭歩鹿真（いくきゅうりょ ほろくしん）

郁久閭歩鹿真は、5世紀初頭に存在した柔然の可汗です。彼の生涯は、叔父である斛律を追放し、自ら可汗の座につくという劇的なものでしたが、その統治は長くは続きませんでした。

生涯

神瑞元年（414年）、当時の可汗であった斛律は、北燕の馮跋との間で和親を結ぼうとし、自らの娘を馮跋に嫁がせようとしました。これに対し、歩鹿真は「幼い娘を遠い国に嫁がせるのは忍びない」として、大臣の娘を代わりに差し出すことを提案しましたが、斛律はこれを却下します。

この決定に不満を持った歩鹿真は、大臣の樹黎や勿地延らに嘘の情報を流し、「斛律はお前たちの娘を側女として遠い国に送ろうとしている」と吹き込みます。この策略に乗った樹黎らは歩鹿真と共謀し、夜に斛律を捕え、娘とともに北燕へ追放してしまいます。そして、樹黎は歩鹿真を新たな可汗として擁立し、自らは宰相として政治を主導しました。

可汗となった歩鹿真でしたが、その行動は新たな争いの火種となります。彼は社崙の子である社抜と共に、大人（部族長）の叱洛侯の家を訪れ、そこで叱洛侯の若い妻と関係を持ちます。この関係を通じて、歩鹿真は叱洛侯が謀反を企て、大檀を可汗にしようとしているという情報を得ます。

この情報を得た歩鹿真は、八千の騎兵を率いて叱洛侯の家を包囲し、叱洛侯を自殺に追い込みます。しかし、次に歩鹿真は大檀を襲撃しますが、逆に反撃を受け、捕えられて殺害されてしまいます。そして、大檀が自ら可汗を名乗ることとなりました。

歩鹿真の生涯は、柔然内部の権力闘争の激しさを物語っています。彼の策略と行動は、一時的に可汗の座を手に入れるものの、最終的には自身の破滅を招き、柔然の勢力争いを激化させる結果となりました。

参考資料

『魏書』（列伝第九十一 蠕蠕）
『北史』（列伝第八十六 蠕蠕）
* 『晋書』（載記第二十五 馮跋）

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