北燕

北燕（ほくえん）

北燕は、五胡十六国時代（4世紀初めから5世紀前半）に存在した王朝の一つです（407年 - 436年）。鮮卑化した漢人将軍であった馮跋（ふう ばつ）が、後燕の王であった慕容熙（ぼよう き）を廃位して建国しました。首都は黄龍府、現在の遼寧省朝陽市に位置する龍城でした。主に遼西地方を領有し、南朝の宋からは「黄龍国」と呼ばれることもありました。

歴史

建国期

後燕の中衛将軍であった馮跋は、407年7月に主君である皇帝慕容熙を殺害し、後燕を滅ぼしました。馮跋は後燕の第2代皇帝慕容宝（ぼよう ほう）の養子であった慕容雲（ぼよう うん）を新たな皇帝（天王）に擁立し、自らは実権を掌握しました。これが北燕の建国とされています。慕容雲は高句麗人の後裔であり、天王に即位してからは姓を高氏に戻しました。高雲の即位により、高句麗との関係は後燕時代よりもかなり好転しましたが、逆に北魏とは幽州刺史の慕容懿（ぼよう い）が離反するなどしたため悪化しました。また、傀儡として立てていた高雲が409年10月に寵臣の離班（りはん）や桃仁（とうじん）に殺害されたため、馮跋はこの混乱を鎮定して自ら天王に即位しました。なお、馮跋が即位した時点を北燕の建国とする説もあります。

内訌と北魏との対立

北燕は西の強国である北魏からの圧力に苦しめられ、馮跋は東晋と通交し、また当時蒙古平原を支配していた遊牧民の柔然（じゅうぜん）との間に婚姻関係を結び、さらに契丹と通交して対抗しました。そしてこれを背景に北魏の使者を2回にわたって捕縛する事件を起こしたので、416年からは北魏より侵略を受けるようになります。しかし、北魏は当時、西の夏とも敵対しており、大規模な攻勢を北燕にまでかける余裕はなく、両国の間は緊張したまま推移しました。しかし、北燕内部では馮跋の従兄の馮万泥（ふう ばん でい）や従兄の子の馮乳陳（ふう じょう ちん）が反乱を起こすなど内紛もあり、北燕の中枢は安定しているとは言い難い状況でした。

430年9月、馮跋は病に倒れたため、次男の馮翼（ふう よく）に国事を委ねました。ところが、外戚の宋氏がこの処置に反発して馮跋を幽閉したので、馮跋の弟である馮弘（ふう こう）が宋氏に対して反乱を起こしました。この混乱の最中で馮跋は死去し、新しい天王には馮弘が即位しました。しかし、北燕ではその後、後継者争いが起きて馮弘の世子である馮崇（ふう ちょう）が北魏に出奔し、北魏に庇護されて遼西王に任命されて亡命政権を形成するなど、既に末期症状の兆しが見え始めていました。

滅亡

北魏の太武帝は431年に西の夏を滅ぼしたので、432年からは連年のように北燕を攻撃しました。これに対して馮弘は東晋滅亡後に成立していた宋との連携を強化し、435年1月には遂にその属国となって支援を受けましたが、北魏からはその後も攻撃を受け続け、436年3月には北魏の大規模な攻勢を受けたので、4月に高句麗に亡命しました。これをもって北燕は国家としては滅亡しました。

馮弘は高句麗から宋への亡命を希望しましたが、438年3月に北魏の圧力に屈した高句麗によって殺害され、北燕は完全に滅亡しました。

遺構

近年、遼寧省北票市西官営鎮において、北燕宰相の馮素弗（ふう そふつ）の華麗な墳墓が発掘されました。

北燕の君主

恵懿帝(高雲、在位407年 - 409年) 天王と称する。
太祖文成帝(馮跋、在位409年 - 430年) 天王と称する。
昭成帝(馮弘、在位430年 - 435年) 皇帝と称する。
435年 - 436年'>[馮弘] 宋に封ぜられた燕王となる。

元号

正始（407年 - 409年）
太平（409年 - 430年）
* 太興（431年 - 436年）

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