馮跋

馮跋（ふう ばつ）：北燕を築いた知勇兼備の英雄

馮跋（370年 - 430年）は、五胡十六国時代の北燕の第2代天王であり、その生涯は激動の時代を生き抜いた英雄の物語です。漢民族出身でありながら、異民族が割拠する時代に独自の勢力を築き上げ、北燕という国を打ち立てました。

生い立ちと後燕での活躍

馮跋は、もともと晋の長楽郡信都県の出身でした。永嘉の乱を避けて上党へ移住し、父の馮安は西燕の将軍として活躍しました。しかし、後燕によって西燕が滅ぼされると、馮跋は故郷を離れざるを得なくなります。幼い頃から落ち着きがあり、度量の大きさを示していた馮跋は、後燕で慕容宝の中衛将軍に任命されます。この頃、慕容宝の養子である慕容雲（後の高雲）と親交を深めます。

北燕建国への道

後燕の政治が混乱を極める中、馮跋は弟の馮素弗と共に山沢に身を隠します。これは、慕容熙の不興を買ったためとも伝えられています。追われる身となった馮跋は、同志と謀り、慕容熙に対する反乱を決意。龍城に潜入し、慕容熙が皇后の葬儀で不在の隙をついて挙兵します。馮跋は、かねてから見識を認めていた慕容雲を君主に推戴し、自らはその補佐として国政を担いました。こうして、北燕が建国されることになります。

北燕の天王として

高雲（慕容雲）を傀儡として擁立していましたが、高雲は近臣によって暗殺されます。その後、馮跋は衆望を担って天王に即位。国号は「燕」を踏襲し、太平と改元しました。馮跋は、政治に尽力し、農耕を奨励することで民衆の生活を安定させました。また、税役を軽減するなど、民政に力を入れたことで、市民から大いに喜ばれたと伝えられています。

治世の終焉とその後

北魏からの侵攻を受けながらも、馮跋の治世は20年以上にわたりました。太平22年、馮跋は病に倒れ、太子の馮翼に後を託しますが、後継者争いによって馮弘に殺害されてしまいます。

馮跋は、激動の時代において、卓越したリーダーシップと民を思う政治手腕を発揮し、北燕という国を築き上げました。その生涯は、後世に語り継がれる英雄の物語として、今もなお私たちに感動を与え続けています。

人物評価

馮跋は、知略と勇気を兼ね備えた人物として評価されています。また、民政を重視し、民衆の生活を安定させたことでも知られています。その功績は、北燕という国を築き上げたことだけでなく、民衆の支持を得て安定した国家運営を行ったことにもあると言えるでしょう。

参考文献

『晋書』「慕容雲載記」「馮跋載記」巻124、125
『資治通鑑』「晋紀」「宋紀」巻109、115 - 121
『魏書』「列伝第八十五 - 海夷馮跋」巻97
『十六国春秋』「北燕録」

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