郁久閭皇后

郁久閭皇后（いくきゅうりょこうごう）

郁久閭皇后（525年 - 540年）は、西魏の文帝の2番目の皇后であり、北方の遊牧民族である柔然の出身です。彼女の短い生涯は、西魏と柔然という二つの国家間の政治的関係に深く関わっていました。

生涯

郁久閭皇后は、柔然の可汗である阿那瓌（あなくい）の長女として生まれました。彼女は容姿が美しく、態度も落ち着いており、知恵にも優れていたと伝えられています。

当時、柔然はしばしば西魏の北方の国境を侵犯していました。そのため、西魏の文帝は柔然との間に和平を結ぶため、婚姻による同盟を提案しました。この婚姻の使者として、扶風王である元孚（げんふ）が柔然へ派遣されることになりました。

元孚が郁久閭皇后を迎える際、南面して礼を受けることを求めましたが、彼女はこれを拒否しました。「私はまだ魏の皇帝に謁見していないので、今はまだ柔然の娘です。魏の武官であるあなたが南を向くならば、私は東を向くのが礼にかなうでしょう」と答えました。このエピソードは、彼女の聡明さと誇り高さを示すものとして知られています。

538年1月、郁久閭皇后は長安に入り、同年3月に皇后に立てられました。しかし、540年に懐妊し、難産の末に16歳という若さで亡くなりました。彼女の遺体は少陵原に葬られ、後に551年に文帝の永陵に合葬され、悼皇后と諡（おくりな）されました。

郁久閭皇后の意義

郁久閭皇后の存在は、西魏と柔然との関係において重要な意味を持ちます。政略結婚という形で西魏に入った彼女は、両国間の和平を象徴する存在でした。彼女の死は、両国関係に影響を与えた可能性も指摘されています。

伝記資料

『北史』巻13 列伝第1

関連項目

乙弗皇后 - 文帝の最初の皇后。彼女との関係も西魏の宮廷における権力関係を理解する上で重要です。

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