郡山総合運動場開成山野球場

ヨーク開成山スタジアム

概要

福島県郡山市の開成山公園内にある野球場、郡山総合運動場開成山野球場は、地域のスポーツ拠点として重要な位置を占めています。2017年2月からは、ヨークベニマルが取得した命名権に基づき、「ヨーク開成山スタジアム」の愛称が使用されています。この施設は郡山市によって管理運営されています。

歴史

当球場は1952年（昭和27年）、郡山市の中心部に位置する開成山公園の一角、市役所に隣接する場所に開設されました。開成山陸上競技場や体育館などと共に、開成山総合運動場を構成する主要施設です。開設当初から、主に高校野球をはじめとする県内のアマチュア野球の公式戦会場として利用されてきました。フィールドは両翼100メートルと、当時の日本の野球場としては広大な部類に入り、国際規格が一般的になる以前においては、熊本県の藤崎台県営野球場と並んで日本有数の広さを誇っていました。

施設の拡張は1969年（昭和44年）に行われ、内野スタンドが増築されたことを記念して、同年にプロ野球イースタン・リーグ公式戦が初めて開催されました。翌1970年（昭和45年）には、初めてプロ野球の一軍オープン戦が、さらに1971年（昭和46年）にはセントラル・リーグ公式戦が開催されるなど、プロ野球の試合も誘致されるようになります。また、同年と1974年（昭和49年）には日米野球も行われました。1987年（昭和62年）には照明設備が設置され、夜間試合であるナイター開催が可能になりました。

かつてはプロ野球の一軍公式戦が定期的に開催されていた時期もありましたが、特に内野スタンドの一部など、開設当初の設備が築半世紀を超えて老朽化が進んだこと、そして福島県内に新たな野球場が整備されたことなどから、1990年（平成2年）を最後に一軍公式戦は長らく行われなくなりました。野球以外の利用として、1995年（平成7年）に郡山市で開催された国民体育大会冬季大会では、アイスホッケー競技の会場となりました。

施設の老朽化に対する懸念から、地元経済界や競技関係者からは市に対して球場の改修を求める声が高まりました。この動きには、矢吹町出身の野球評論家である中畑清氏（元プロ野球選手・監督）らも参加し、改修費用確保のための募金活動が行われるなど、機運が盛り上がりました。2005年（平成17年）からは、東北楽天ゴールデンイーグルスがイースタン・リーグの公式戦を当球場で開催するようになり、1万人を超える観客を集めるなど、再び一軍公式戦を誘致しようという期待が高まりました。郡山商工会議所が楽天の後援組織を結成し、二軍戦の誘致に積極的に取り組み、入場無料化などの施策も功を奏して、2006年（平成18年）には二軍戦でありながら当時の球団最多となる1万1千人以上の観客を動員しました。

こうした状況を受け、郡山市は2006年（平成18年）に球場の全面改修を行う方針を決定しました。専門家や公募市民からなる検討委員会が改修目標について議論を重ね、2008年（平成20年）には大規模改修事業の設計・施工を鹿島建設が担うことが決まりました。改修計画では、メインスタンドを全面改築して2層式とし、大屋根を設置、スタンドの耐震化、スコアボードの全面電光化、フィールドの拡張（中堅を117メートルから122メートルへ）などが盛り込まれました。この改修では、施設の改善だけでなく、災害時の広域防災拠点としての機能強化も重要な柱とされました。総工費約23億円のうち、国からの交付金や市民の募金・経済界からの寄付による基金などが充てられました。

改修工事は2009年（平成21年）に着工し、2010年（平成22年）3月に完成しました。二層構造となったメインスタンドには、広がる翼をイメージしたシンボリックな大屋根が架けられています。メインスタンド内には、中畑清氏の記念品などを展示するメモリアルコーナーや、ユニバーサルデザインに配慮した車椅子席、エレベーター、授乳室なども備えられています。防災機能としては、約35トンの水道水を常時確保できる受水槽、都市ガス寸断に備えたプロパンガス熱源、自家発電装置が整備され、フィールド内は避難所として利用できるよう工夫されています。LED方式の大型スコアボードは、災害時には市の広報ツールとしても活用されます。

改修完了後、郡山市などはプロ野球一軍公式戦の誘致を再び進め、2010年（平成22年）には20年ぶりに一軍公式戦が開催されました。2011年（平成23年）の東日本大震災発生時には、球場メインスタンドに郡山市の災害対策本部が設置され、公園内の施設が避難所として活用されるなど、防災拠点としての役割を実際に果たしました。震災の影響で中止・変更となった試合もありましたが、震災からの復興支援としてプロ野球の試合が開催される実績も積み重ねました。2013年（平成25年）には中畑清氏が監督を務める横浜DeNAベイスターズが初めて主催試合を開催しました。

また、2015年（平成27年）からは独立リーグであるベースボール・チャレンジ・リーグに加盟した福島ホープス（現福島レッドホープス）のホーム球場の一つとして、公式戦が開催されています。2016年、2017年にはチームの主催試合の中で最も多く開催され、その後も利用が続き、2023年（令和5年）には再び最多開催球場となりました。

2016年（平成28年）には命名権がヨークベニマルに付与されることが発表され、2017年（平成29年）2月から「ヨーク開成山スタジアム」の愛称が使用されています。しかし、2017年、2018年のプロ野球一軍戦は雨天中止となり、愛称使用後しばらくは一軍戦の開催に至りませんでした。2019年（令和元年）には交流戦が開催され、2022年（令和4年）にも一軍戦が行われています。

立地について、郡山市は福島県の中央に位置し、広域交通の利便性は高いものの、球場周辺の敷地が限られているため、改修後の収容人数は約18,000人程度と他の大規模球場と比較してやや小規模です。また、市中心部にあるため駐車場の収容台数が少ないなど、施設や立地に関する課題も抱えています。県内の他の野球場との競合も考慮しながら、イベント開催の調整が進められています。

施設概要（2010年改修後）

フィールドサイズ: 両翼100.7m、101m、中堅122m（改修時に中堅を5m拡張）。左右非対称の形状です。
フェンス: 中堅付近がやや高くなっています。
グラウンド: 内野はクレー舗装、外野は天然芝です。
照明設備: 照明塔6基が設置されています。
スコアボード: 全面フルカラーLED方式です。改修後、プロ野球のカウント表示変更に合わせて「SBO」から「BSO」順に配置が変更されました。災害時の情報伝達機能も備えています。
収容能力: 18,200人（内野10,074人、外野8,126人）。メインスタンドは全面改築による二層式、一・三塁側と外野スタンドは既存躯体を改修した二層式・一層式となっています。

交通アクセス

バス: JR郡山駅西口から福島交通バスに乗車し、「郡山市役所」バス停で下車、徒歩約2分です。
タクシー: JR郡山駅西口からタクシーで約10分です。
* 自動車: 東北自動車道 郡山インターチェンジから車で約15分です。

今後の予定

開成山地区体育施設の整備事業に伴い、2024年（令和6年）8月1日から2025年（令和7年）3月31日まで工事が行われる予定です。期間中は一部利用を制限しつつ開館が続けられる見込みです。

（開成山公園内には、この他の施設として郡山総合運動場開成山陸上競技場、郡山総合体育館、開成山屋内水泳場などがあります。）

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