郡山飲食店ガス爆発事故

郡山飲食店ガス爆発事故について

2020年7月30日朝、福島県郡山市島二丁目にある飲食店「しゃぶしゃぶ温野菜 郡山新さくら通り店」で、大規模なガス爆発事故が発生しました。この事故は、店舗の改装作業中に起きたもので、周辺地域に甚大な被害をもたらし、多くの死傷者を出す惨事となりました。

事故の概要

事故が発生したのは午前8時57分頃。郡山駅から西へ約4kmの市街地に位置する「しゃぶしゃぶ温野菜 郡山新さくら通り店」で、大きな爆発音が確認されました。店舗は鉄骨を残してほぼ全壊し、半径570mにわたって周囲の建物や施設に被害が及びました。爆発音は遠く離れた郡山駅付近でも確認され、テレビ局の情報カメラもその瞬間を捉えました。

当時、店舗は新型コロナウイルス感染症の影響で4月22日から休業しており、従業員や客はいませんでした。8月3日の営業再開に向けて改装工事が行われていましたが、その最中に事故が発生しました。事故調査の結果、プロパンガスボンベ6本のうち3本の栓が開いた状態であったこと、また、故障が頻発していたガスコンロをIH調理器に交換するための工事を前日に急遽行ったことが判明しました。これらの状況から、店内にガスが充満した状態で、改装工事を担当する現場監督が入店した際、電気のスイッチを入れた瞬間に引火した可能性が指摘されています。

また、この店舗では、防火管理者選任や消防訓練の未実施など、消防法違反が以前から指摘されており、消防署が再三指導していたにもかかわらず改善されていませんでした。ガス会社も6月の点検でガス管の腐食を指摘していたにもかかわらず、適切な対応が取られていなかったことも判明しています。さらに、休業中にもかかわらずガスの使用量が増加していたことも明らかになっています。

事故による影響

この事故で、改装工事の現場責任者である男性が亡くなり、19名が負傷しました（うち2名が重傷）。周辺の建物にも大きな被害が出ており、向かい側の東邦[[銀行]]新さくら通り支店では、窓ガラスの破損や行員・利用者の負傷が発生しました。近隣の学校では、試験中に窓ガラスが割れるなどの被害が発生し、生徒が過呼吸になるなどの影響が出ました。また、爆風で飛散した物が電線に絡まり、周辺地域では停電やガス漏れが発生しました。

周辺道路は一時通行止めとなり、バスの迂回運行が行われました。また、家屋が損壊し、居住不能となった住民に対しては、郡山市が避難所を開設したり、市営住宅への移住を支援するなどの対応を行いました。

この事故により、「しゃぶしゃぶ温野菜 郡山新さくら通り店」は閉店を余儀なくされ、跡地には別の店舗が建てられています。

裁判

刑事裁判

福島県警察は、業務上過失致死傷容疑で、店の運営会社の社長、ガス工事業者、保安機関の担当者ら4人を書類送検しました。しかし、福島地検は「過失の認定が困難」として不起訴処分としました。その後、被害者が検察審査会に審査を申し立てた結果、4人について不起訴不当と議決され、最終的に保安機関の職員1人が業務上過失致死傷罪で在宅起訴されました。他の3人は不起訴となりました。

民事裁判

郡山市は、事故に関連する費用を、飲食店チェーン本部、店舗経営者、工事請負業者、建物所有者、ガス供給者、ガス点検業者に請求しましたが、支払いを拒否されたため、損害賠償を求める訴えを起こしました。また、この事故によって被害を受けた企業や個人も、運営会社などに対して損害賠償を求める訴訟を起こしています。しかし、刑事裁判で全員が不起訴となった影響もあり、被害者への補償は未だに進んでいません。

まとめ

郡山飲食店ガス爆発事故は、安全管理体制の不備が招いた悲惨な事故であり、多くの人々に深い傷跡を残しました。この事故を教訓として、二度とこのような悲劇が繰り返されないよう、関係機関や事業者は安全管理の徹底に取り組む必要性が強く求められています。

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