郡愛子

郡 愛子

（こおり あいこ）

1948年（昭和23年）12月20日生まれ、東京都出身の日本の声楽家（メゾソプラノ）、オペラ歌手、教育者。現在は公益財団法人日本オペラ振興会 常務理事、日本オペラ協会総監督を務めている。

東京女学館中学・高等学校で学び、オーケストラ部でヴァイオリンに触れる一方、合唱部では部長を務めるなど音楽への造詣を深めた。特に合唱部での活動を通じて、その声楽における天賦の才を見出されたという。その後、桐朋学園短期大学声楽専攻科に進み、萩谷納、浦野りせ子の両氏に師事して専門的な研鑽を積んだ。

大学修了後、一度は結婚し家庭に入るが、夫の理解と勧めを得て、声楽家としての道を歩み始める。1974年（昭和49年）に日本オペラ協会公演 香月修作曲『わらしべ長者』で初舞台を踏んだ（公式プロフィールでは1975年（昭和50年）の三木稔作曲『春琴抄』がお手伝い役としてデビューとされる）。そして1978年（昭和53年）には、ドニゼッティ作曲のオペラ『愛の妙薬』でジャンネッタ役を演じ、藤原歌劇団の団員としてデビューを果たした。

以来、藤原歌劇団および日本オペラ協会の主要な公演をはじめ、小澤征爾指揮による『ヘネシー・オペラ・シリーズ』、新国立劇場主催公演など、国内外の著名なプロダクションに多数出演。特に、日本初演のオペラや日本人作曲家による創作オペラにおいて、その表現力と存在感を遺憾なく発揮し、日本のオペラ界における重要なレパートリーの開拓に貢献した。その活動は、クラシックオペラから現代日本の作品まで多岐にわたる。

オペラ出演と並行して、コンサート歌手としても精力的に活動。ホルスト・シュタイン指揮のNHK交響楽団定期演奏会など、日本の主要オーケストラとの共演も数多い。1998年から1999年にかけては、佐渡裕が指揮する『バーンスタインズ・ニューヨーク』や『キャンディード』の全国ツアーに参加し、幅広い層の聴衆に歌声を届けた。さらに、2002年に横浜アリーナで開催された「世界3大テノール」のコンサートでは、日本人メゾソプラノとして唯一ゲスト出演を果たし、国際的な舞台での存在感を示した。

個人的な活動として、ほぼ毎年リサイタルを開催しており、とりわけ5年ごとに東京芸術劇場大ホールで行われる周年記念リサイタルは特筆される。これにより、長年にわたりファンとの交流を深め、自身の音楽世界を探求し続けている。

その功績は多方面で認められており、1985年度、1986年度には二年連続でジロー・オペラ賞を受賞。1987年度には『郡愛子メゾ・ソプラノ リサイタル－オルフェオの世界』の成果に対し、文化庁芸術祭賞が贈られた。

近年は後進の指導やオペラ界全体の発展にも尽力しており、2016年4月より日本オペラ協会総監督補を経て、2017年4月からは同協会の総監督に就任。運営の要職として、日本のオペラ芸術の振興に貢献している。公益社団法人日本演奏連盟の理事も務めるなど、音楽界の発展にも寄与している。

テレビではNHK『ニューイヤー・オペラコンサート』をはじめ、『題名のない音楽会』など数多くの音楽・報道番組に出演。映画『スワン・プリンセス/白鳥の湖|スワン・プリンセス_白鳥の湖』では声優も務めた。三菱自動車「ディアマンテ」のCMソングを担当し、大きな話題となったエピソードも知られる。CDなどの録音も多数発表しており、その幅広い活動の一端を聴くことができる。

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