郤缺

郤缺の生涯とその業績

郤缺（げき けつ、? - 紀元前597年）は、中国春秋時代の晋国における著名な政治家であり、その生涯は数多くの波乱に富んでいます。彼は郤氏出身で、父は郤芮という有力な官吏でしたが、父が晋の君主である文公に反逆したため、郤家は没落を余儀なくされました。郤欠はその後、農業に従事しながら平穏を求めて生活することになります。

没落からの再起

郤欠が再び脚光を浴びるきっかけは、ある日、胥臣が彼に気付くことから始まります。胥臣は晋国の文公の使者であり、買い物をしていた郤欠夫婦の姿を見て驚きました。この夫婦は互いに相手を敬い合っており、その光景に心打たれた胥臣は郤欠を文公に推薦することを決意します。

文公に対して「彼は賢人か？」と問われた胥臣は、郤欠の礼儀正しさや人徳の深さを強調しました。文公は初めは躊躇しましたが、胥臣の言葉に納得し、ついには郤欠を下軍大夫として迎え入れることに決めました。この任命は、彼の政治復帰を意味するだけでなく、父の郤芮の過去を越える試練でもありました。

政治的影響力の拡大

文公の死を受け、郤欠は襄公のもとで狄（敵）を討つ功を上げることで、再び地位を高めます。そして、その功績により、かつて父が統治していた冀の地を与えられました。彼は慎重な姿勢で君主の信任を得ていきましたが、その一方で以前のように軍を持つことは許されませんでした。

その後、趙盾が宰相に就任すると、彼の政治的バランスを影響する事件が起きました。趙盾は国の安定を求め士会（隋会）を呼び戻そうとしましたが、彼は賈季を帰すことに反対し、士会を推挙しました。これにより紀元前614年、士会が晋に復帰し、郤欠の力はさらに増していきました。

正卿としての活躍

時は流れ、霊公が趙穿に討たれ、成公の治世となると、郤欠はその地位を高め、正卿に任命されました。彼はかつての父の行いにもかかわらず、周囲からの信用を得ることに成功しました。成公の死後、赤狄の脅威が高まる中、彼はその部族に和睦を呼びかける外交活動に注力しました。

紀元前598年には、狄の部族の多くを晋に従わせ、その信頼を築くことに成功します。この際、景公が毅然とした態度で狄の部族と交渉を行い、彼の応援を受けて信頼関係を深めました。これにより、郤欠の地位は確固たるものとなり、彼の外交手腕が広く評価される結果となりました。

最後の年とその後

紀元前597年、郤欠はその生涯を閉じましたが、彼の業績はその後も語り継がれました。死後、成という諡号を与えられ、郤成子として人々に記憶されます。彼の子、郤克もまた後に晋の正卿に任命され、家系の名声は続きました。

郤欠の生涯は、逆境から立ち上がり、国家に貢献した姿が示すように、政治や道徳がいかに結びついているかを教えてくれます。歴史の中で彼が果たした役割は、未だ多くの人々にとっての教訓として伝承されています。

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