郵便配達は二度ベルを鳴らす (1943年の映画)

映画『郵便配達は二度ベルを鳴らす』の概要

『郵便配達は二度ベルを鳴らす』は、イタリアの映画監督ルキノ・ヴィスコンティの1943年のデビュー作です。原作はアメリカの作家ジェームズ・M・ケインの同名小説ですが、映画は原作者の許可を得ないまま製作されたため、リリースから数日でイタリア国内で上映禁止となりました。このため、長年「幻の作品」とも呼ばれてきました。後に、ヴィスコンティの死後に公開された1976年のニューヨーク・フィルム・フェスティバルによって、その存在が再評価され、日本でも1979年にリリースされました。

この作品は、ルキノ・ヴィスコンティにとって最初の長編映画であるだけでなく、映画史におけるネオレアリズモ運動の先駆けとも言われています。一般的には、ネオレアリズモ運動の始まりはロベルト・ロッセリーニの1945年の作品『無防備都市』とされていますが、本作でも素人役者の使用や屋外でのリアルな撮影が行われており、ヴィスコンティ自身は本作をネオレアリズモの初期の例として強調しています。とはいえ、このスタイルを持つ作品は本作以前にも存在しており、そのため何が「初」となるのかについては異論がありますが、現在では「先駆的な作品」として言及されることが多いです。

影響と反ファシズム

ヴィスコンティがスラムなどの社会の底辺に生きる人々の生活に目を向けるようになったのは、フランスの監督ジャン・ルノワールの影響を受けたとされています。実際、ヴィスコンティはルノワールの『トニ』で助手を務めた経験があります。この映画は、ファシズム体制下で撮影されたため、あからさまな批判は避けられていますが、登場人物の関係には不倫という禁忌が描かれ、反フランコの象徴とされる「スペイン人」のキャラクターが存在し、隠れた反ファシズム的なメッセージが盛り込まれています。

ストーリーの流れ

物語は、北イタリアのポー川沿いにある食堂に風来坊のジーノが登場するところから始まります。食堂の主人ブラガーナの妻ジョヴァンナは、ジーノに心を惹かれ、その日中に関係を持ちます。ブラガーナは善良でお人好しのため、ジーノを数日間滞在させることにします。その間にジーノとジョヴァンナは駆け落ちを計画しますが、ジョヴァンナは放浪生活の厳しさに耐えられず途中で引き返してしまいます。

その後、ジーノは「スペイン人」という旅芸人と知り合い、放浪を続けますが、再びブラガーナたちと出会い、食堂に戻る過程でブラガーナを殺害することを決意します。自動車事故を装ってブラガーナを殺す成功を収めますが、その後の新しい生活には緊張が漂い、ジーノはジョヴァンナへの疑念を抱き始めます。さらに警察はブラガーナの死の真相に近づいていき、二人は指名手配されることに。

逃亡を試みる中、事故に遭い、ジョヴァンナが命を落としてしまいます。ジーノは彼女との愛と未来を失った後、警察に逮捕されることになります。このストーリーは、裏切りと悲劇、そして人間関係の複雑さを描いており、観客に深い考察を促します。

キャストと評価

本作に出演するのは、ジーノ役のマッシモ・ジロッティ、ジョヴァンナ役のクララ・カラマイ、ブラガーナ役のファン・デ・ランダなど、多彩なキャストです。映画はその製作当初より評価が高く、Rotten Tomatoesでは15件の評論全てが好評価で、平均8.1点を記録しています。このように、『郵便配達は二度ベルを鳴らす』はヴィスコンティの功績が色濃く残った作品であり、映画史における重要な位置を占めています。

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