根付

根付の魅力と歴史

概要

根付（ねつけ）は、江戸時代の日本において重要な役割を果たした留め具です。この装置は、煙草入れや印籠、巾着、そして小型の革製鞄といった色々な小物を携帯する際に、紐を結びつけるために使われました。特に、ポケットのない男性用の着物において、根付は帯から紐で吊るすことによって、物品が落下するのを防ぐために用いられました。サイズは数センチから1センチ程度の非常に小さなものも含まれ、大半は3〜4センチほどのサイズが一般的です。材料は主に黄楊、一位、黒檀などの硬い木材や象牙などが使用されており、根付は専用の刀を使って一つずつ手彫りで制作されました。

江戸時代初期には、根付は実用的な部分が重視されていましたが、次第に装飾性も高まり、特に江戸時代後期に人気を博しました。詳細な彫刻が施された根付は、美術品としても評価され、収集の対象となるようになりました。彫刻の題材は広範で、人物や動植物、妖怪や物語に関するものまで多岐にわたりました。

歴史

安土桃山時代を経て、江戸時代が始まると、当時の天下人である徳川家康は、外出時に薬を持ち歩く重要性を説きました。これに伴い、高級武士や公家たちは印籠や小型の薬用携帯ケースの使用を始め、根付はこれらの物品を持ち運ぶ際の留め具として位置づけられるようになりました。この時期、特に銅製の糸印が使われていたとされます。

時代が進むにつれて、根付は高級武士や公家、さらには商人や町人の間でも広まり、その美的価値が評価されるようになりました。また、17世紀に入ると、根付のデザインは更に洗練され、「なごみ感」やエスプリ、洒落が付加され、現代の根付の基盤が築かれました。

明治時代に入ると、根付の国内生産は著しく減少しますが、海外の需要が高まり、特に輸出用として生産が行われました。この時期、根付は実用的な役割を失い、精緻な彫刻品としてのみ評価されるようになりました。大正、昭和時代も、その流れは続いていましたが、いくつかの作家たちが作品を手がけ、伝統を受け継ぎました。平成以降は、多分野からの技術者が参入し、現代根付が再注目されています。公益財団法人・京都清宗根付館は、2014年から「根付アワード」という新作根付のコンテストを開催し、創作活動が活発化しています。

蒐集品としての位置づけ

根付は国内外で蒐集対象となっており、著名な蒐集家には郷誠之助や高円宮憲仁親王・久子夫妻がいます。彼らが遺した根付は東京国立博物館に寄贈され、その名を冠したコレクションとして収蔵されています。また、アメリカでは根付の研究会が設立され、国際的な蒐集活動が進んでいます。

根付の種類は形状や制作地域により多様で、輪車根付や差根付、饅頭根付、箱根付などが存在します。それらは様々な地域で造られ、江戸、京都、中京地域、石見などが含まれます。このように、根付は日本の文化において欠かせない存在であり、その美術的な魅力は多くの人々に感銘を与え続けています。

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