都道府県立図書館

都道府県立図書館：地域社会を支える知識と情報の拠点

都道府県立図書館は、各都道府県が設置する公立図書館です。多くの場合、県庁所在地に位置していますが、地域特性や行政運営の都合から、県庁所在地以外の都市に設置されている場合もあります。これらの図書館は、単なる蔵書施設にとどまらず、地域社会における知識・情報基盤として、多様な役割を担っています。

都道府県立図書館の類型と役割

図書館情報学者の大串夏身氏による分類によれば、都道府県立図書館は大きく3つの類型に分けられます。

1. 県域の中核図書館: 県内図書館ネットワークの中心として機能し、情報サービスの中核を担う図書館です。
2. 郊外移転型図書館: 都心部から郊外へ移転した図書館で、広域的なサービス提供を目指しています。
3. 市町村立図書館と一体化した図書館: 市町村立図書館との連携を密に行い、一体的なサービスを提供する図書館です。

これらの類型以外にも、それぞれの図書館が独自の役割を担っています。大串氏は、都道府県立図書館の主要な役割として以下の4点を挙げています。

1. 市町村立図書館の支援: 資料の相互貸借拠点としての機能を果たし、迅速な資料提供や先進的な図書館運営の模範を示す役割を担います。中には、公民館図書室や大学図書館、高校図書館への資料提供まで行う図書館もあります。

2. 市町村立図書館職員の研修: 都道府県教育委員会と連携しつつ、市町村立図書館職員に対する継続的で体系的な研修を実施することで、図書館サービスの質向上に貢献しています。

3. 調査・研究、新サービスの創造: 県内図書館の現状把握、新たな図書館サービスの研究開発を行い、その成果を市町村立図書館へ還元することで、図書館サービス全体の向上に寄与しています。

4. 公的サービス提供施設としての責任: 都道府県民全体の福祉向上に貢献するため、ブックスタートなどの幼児向け読書支援、学校教育との連携、生涯学習支援など、幅広い活動を展開しています。多くの都道府県立図書館は、一般県民への図書の貸し出しも行っています。ただし、東京都立図書館は、市区町村立図書館への資料貸出に特化しており、一般県民への直接貸出は行っていません。

歴史的背景：中央図書館制度

第二次世界大戦以前には、「中央図書館」制度が存在していました。各都道府県において、1つの公立図書館が中央図書館に指定され、資料貸出、図書館指導、目録作成、機関誌発行、共同購入斡旋、郷土資料収集などの役割を担っていました。多くの場合、都道府県立図書館が中央図書館に指定されていましたが、県立図書館が存在しなかった県では、県庁所在地の市立図書館がその役割を担っていました。

都道府県立図書館の重要性

都道府県立図書館は、地域社会における知識・情報アクセスの向上に不可欠な存在です。それぞれの図書館が、地域特性やニーズに合わせて多様な役割を果たし、県民の学習機会の向上、地域社会の発展に貢献しています。今後の更なる発展と、地域社会との連携強化が期待されます。

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