鄧子龍

鄧子龍（とう しりゅう）は、明代に活躍した武将です。字は武橋といい、南昌府豊城県の出身です。嘉靖10年（1531年）に生まれ、万暦26年（1598年）に波乱の生涯を終えました。彼は、第二次万暦朝鮮の役（慶長の役）において、明の朝鮮援兵の水軍副総兵として参戦し、その勇猛さを示す一方で、戦場での無念の死を遂げました。

生涯

鄧子龍は、その雄偉な体格と群を抜く勇猛さで知られていました。嘉靖年間には、江西で起こった反乱を鎮圧するために徴募に応じ、樟樹鎮の略奪を鎮めました。この功績が認められ、広東把総に任命されました。

万暦元年（1573年）には、張元勲に従って恵州の頼元爵の乱を鎮圧し、その後も陳金鶯・羅紹清の乱を平定するなど、数々の反乱鎮圧に貢献しました。反乱軍の首領である黄高暉を捕縛するため、自ら山に入り、生け捕りにするという大胆な行動も行っています。その後、銅鼓石守備に転じ、署都指揮僉事に抜擢され、浙江都司を管掌するなど、着実にキャリアを重ねていきました。一時は罷免に相当する罪を問われましたが、万暦帝の恩赦により罪を問われず、麻陽の苗族の反乱鎮圧のために参将に抜擢され、反乱を鎮圧する活躍を見せました。

万暦8年（1580年）には、五開衛の兵が監司行署を放火する事件が発生し、靖州・銅鼓・龍里の苗族が呼応して反乱を起こしました。鄧子龍は、衛城の東門に放火して反乱軍を誘い込み、ひそかに北門から兵を侵入させるという奇策を用いて反乱軍を壊滅させることに成功しました。

万暦11年（1583年）には、タウングー王朝が雲南に侵攻したため、永昌府参将に転任しました。木邦部の耿馬の罕虔が岳鳳とともに反逆し、タウングー王朝のナンダ・バイン王を唆して永昌府に侵入させました。鄧子龍は、万暦12年（1584年）には、自ら急戦を仕掛け、景宗真と罕虔を戦場で討ち取り、景宗材を生け捕りにしました。さらに、残党が立て籠もる三尖山を攻略するため、プーラン族を金で買収し、間道を把握した上で、少数民族の兵を率いて反乱軍を挟撃し、壊滅させました。これらの功績が認められ、副総兵に昇進しました。

万暦13年（1585年）には、タウングー王朝が孟密に侵攻した際にも、敵を牽制するなどの功績をあげました。しかし、騰衝と姚安の2営を統括するようになると、両軍の待遇に差をつけたため、騰衝の兵士の不満を引き起こしました。さらに、姚安の兵が食糧を求めて反乱を起こす事態も発生し、鄧子龍は罪に問われて官を剥奪されることになりました。

万暦18年（1590年）には、孟養の思箇が反乱を起こした際、審問中であったものの、巡撫の呉定の請願により軍功を立てて罪を償うことを許されました。その後も、丁改十寨の普応春らの反乱鎮圧にも貢献し、副総兵に復帰しました。

万暦20年（1592年）には、勐広土官の思仁が、兄嫁との結婚を禁じられたことから、タウングー王朝に寝返り、孟養を攻めました。鄧子龍は思仁らを撃退しましたが、万暦21年（1593年）には弾劾を受けて罷免され、故郷に帰りました。

万暦26年（1598年）、日本軍が再び朝鮮に侵攻した際、70歳近い老齢ながら200の士卒を率いて援朝し、水軍副総兵に任ぜられました。同年11月19日（明暦）の露梁海戦では、水軍総兵陳璘から、朝鮮水軍統制使李舜臣とともに先鋒を命じられ、自ら先陣を切って奮戦しましたが、突出した乗船が島津義弘の軍に包囲され戦死しました。この戦死は、朝鮮水軍の主将である李舜臣とともに、日本側にはなかった上級指揮官の戦死であり、衝撃を与えました。彼の遺体は故郷に帰って葬られ、朝鮮は彼のために廟を建てて祀りました。

著書には『横矛集』があります。

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