鄭吉

鄭吉（てい きつ）

鄭吉は、紀元前1世紀の前漢時代に活躍した人物で、会稽郡の出身です。兵卒として西域に出征を重ねる中で、その才能を開花させ、最終的には西域都護という重要な役職に就きました。彼の活躍は、漢王朝の西域支配を確立する上で欠かせないものでした。

生涯

鄭吉は、もともと兵卒として漢軍に従軍し、数々の西域遠征に参加しました。その中で、彼はその強い意志と優れた能力を発揮し、外国の事情にも精通するようになりました。これらの功績が認められ、彼は侍郎という官職に抜擢されます。

宣帝の時代、鄭吉は渠犁国に派遣され、罪人たちに耕作をさせ、兵糧を確保する任務を与えられました。さらに、車師国を攻略するために、周辺諸国から兵を徴発し、自らが率いる屯田兵とともに車師国を攻撃しました。車師国は匈奴に援軍を要請しましたが、鄭吉がこれを迎え撃つ構えを見せると、匈奴軍は前進を断念。車師王は烏孫へ逃亡し、これにより、漢は鄭吉を衛司馬に任命し、「護鄯善以西南道」、つまり西域南道の監督役を任せました。

その後、匈奴内部で政情不安が生じると、匈奴の日逐王が鄭吉に降伏を打診してきました。鄭吉は、渠犁や亀茲の兵を徴発して日逐王とその配下12,000人を迎え入れました。離反者を処刑するなど強硬な手段も用いながら、日逐王一行を長安まで護送し、漢王朝への帰順を実現させました。

この功績により、鄭吉は「護車師以西北道」という役職も兼務することになり、西域の南北両道を監督する西域都護となりました。神爵3年（紀元前59年）には、これまでの功績が認められ、安遠侯に封じられました。また、日逐王も帰徳侯に封じられ、手厚く遇されました。

鄭吉は、西域の中心である烏塁城に都護府を置き、西域諸国の鎮撫に尽力しました。彼の治世下、西域は安定を取り戻し、漢王朝の支配が確立しました。

初元元年（紀元前48年）、鄭吉は亡くなり、繆侯と諡されました。安遠侯の爵位は子の鄭光が継承しましたが、鄭光に子がなかったため、彼の代で安遠侯は断絶しました。しかし、王莽が政権を握ると、かつての功臣たちの家系を復興させる政策を打ち出し、鄭吉の曾孫にあたる鄭永が安遠侯に任じられました。しかし、王莽の失脚とともに、再び安遠侯は断絶しました。

鄭吉は、その卓越した軍事的手腕と政治力によって、漢王朝の西域支配を確立し、東西交易の発展に大きく貢献しました。彼の名は、中国の歴史に永く刻まれています。

参考文献

班固著『漢書』巻17景武昭宣元成功臣侯表
班固著『漢書』巻70鄭吉伝
* 班固著『漢書』巻96西域伝

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