車師

車師 ― シルクロードを彩ったオアシス都市国家

車師（しゃし）は、現在の中国新疆ウイグル自治区トルファン市周辺に存在したオアシス都市国家です。古くは「姑師」と呼ばれ、漢代には車師前王国と車師後王国に分かれ、シルクロード交易において重要な役割を果たしました。本稿では、車師の歴史、政治体制、構成国、地理、そして主要な人物について詳細に解説します。

複雑な歴史：漢代から五胡十六国時代まで

車師の歴史は、周辺勢力との複雑な関係によって彩られています。前漢の時代、車師は匈奴の属国として存在していましたが、漢の武帝は西域への勢力拡大を図り、車師を攻撃。これにより車師は前王国と後王国、さらに山北六国へと分割されました。その後も、漢と匈奴の勢力争いの舞台となり、度々両勢力の支配下に置かれたり、独立を回復したりを繰り返しました。

漢の宣帝の時代には、鄭吉や司馬憙らによる軍事行動で、車師は一時的に漢の支配下に置かれますが、匈奴の介入や内紛により、その支配は不安定なものでした。 その後も、匈奴との間で揺れ動き続け、時には匈奴に亡命する王家も現れました。 新代になると、王莽の支配下においても混乱は続き、複数の王が匈奴に亡命したり、漢に殺害されたりしました。

後漢時代に入ると、車師は再び漢と匈奴の間で揺れ動きます。一時的に漢に服属するものの、匈奴の侵攻や内紛により、その支配は不安定なまま推移しました。後漢末期には、班勇らによる軍事行動で、再び漢の支配が強化されましたが、北匈奴の勢力拡大によって、再び混乱の時代に入ります。三国時代、魏の支配下に入りますが、五胡十六国時代には、前涼や前秦などの支配下に入ったり、独立を回復したりと、その属する勢力は流動的でした。北魏の時代になると、車師前王国は北魏に朝貢するようになりましたが、柔然の侵攻などの影響を受けながら存在を維持したようです。

政治体制と構成国

車師前王国と後王国はそれぞれ独自の政治体制を有していました。前王国の首都は交河城に置かれ、後王国の首都は当初は務塗谷、三国時代には頼城に移されました。それぞれに王、輔国侯、安国侯、左右将、都尉などの官職が存在しました。

車師は、前王国、後王国以外にも複数の構成国から成っていました。例えば、『漢書』西域伝には、車師都尉国、車師後城長国、卑陸国、卑陸後国、蒲類国、蒲類後国、移支国などが記録されており、それぞれの国は独自の統治者と人口を有していたようです。後漢時代には、東且弥国、西且弥国、単桓国、畢陸国、蒲陸国、烏貪訾離国なども車師後部国に併属していました。

地理と主要な人物

車師の王都である交河城は、現在の交河故城として遺跡が残っています。トルファン盆地の西端に位置し、東西を2つの河に挟まれた台地上に築かれた天然の要塞でした。

主要な人物としては、漢代の烏貴、軍宿、尉卑大、姑句、須置離、涿鞮、農奇、軍就、加特奴、阿羅多、卑君など、後漢、三国、五胡十六国、北魏時代とそれぞれの時代に王として活躍した人物が知られています。これらの王たちは、漢や匈奴、そして他の勢力との間で政治的な駆け引きを行いながら、車師を統治しました。

結論

車師は、シルクロード交易の要衝として栄えた古代都市国家でした。その歴史は、漢と匈奴の勢力争い、そして内紛に翻弄されながらも、独自の文化と政治体制を維持していました。現在の遺跡からは、当時の繁栄の様子を垣間見ることができ、シルクロードの歴史を考える上で重要な存在であると言えるでしょう。

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