鄭棡

鄭棡（てい こう、チン・クオン）

鄭棡はベトナムの後黎朝における重要な権臣で、東京鄭氏の第7代当主として知られています。彼の封号は安都王であり、後黎朝の中興期に大きな影響を与えました。彼の生涯や業績は、当時のベトナムの歴史に多くの証拠を残しています。

生涯

鄭棡は正和6年（1686年）5月19日に生まれ、初めは父である晋国公鄭柄の次男として生活していました。彼の母は張氏玉楮です。彼は正和21年（1700年）に副将普安侯に初めて封じられ、その後、父の死去に伴い正和23年（1702年）に副将普郡公に加封されます。続く正和24年（1703年）の正月には、欽差節制各処水歩諸営兼総政機太尉安国公に昇格し、理国府の設立を行いました。

彼の統治下では、永盛5年（1709年）に曾祖父の鄭根が亡くなった際にその地位を継ぎ、元帥総国政安都王に封じられました。その後も、永盛10年（1714年）や永盛16年（1720年）にかけて大元帥に就任し、重要な政治的地位を維持しました。

彼の政権下で、南方の広南阮氏との平和が保たれ、曾祖父の政策を引き継ぐ形で土地の再分配や発展的な改革が行われました。これにより、土地を失った農民たちを保護するために土地の私有を制限し、武挙所が設立されるなど、財政や軍事、司法といった多方面で成果を上げました。しかし、これらの政策は鄭氏一族の権力を強化する一方で、農民たちの負担を増やす結果となり、不満を引き起こしました。

特に、北河地域では人口が急増し、多くの農民が土地を失う事態が生じ、彼らは鄭氏に対して怨恨を抱くようになりました。また、宗教面において鄭棡は仏教を奨励し、多くの仏塔を建立しましたが、キリスト教に対しては厳しい制限を課しました。

政治活動

保泰10年（1729年）、鄭棡は皇帝裕宗を脅かし、その息子である皇太子黎維祊に譲位を強要しました。この事件は、彼の権力掌握を示す重要な出来事でした。鄭棡は永慶元年（1730年）に44歳でこの世を去り、次男の鄭杠が後を継ぎました。彼の死後、朝廷からは仁王の尊号が贈られ、さらには荘粛であるとされる様々な諡号が与えられました。

家族

鄭棡は二人の妃を持ち、正室の慈徳太妃武氏玉源の他、慈貞次妃の陳氏玉琰や慈淑次妃の陳氏玉嬪がいました。男子としては、威南王鄭杠や寿郡公鄭档、その他多くの子どもたちが存在しました。また、女子としても数多くの郡主や公主があり、彼らは後に各地の有力者と結婚を果たしました。

鄭棡の物語は、ベトナムの歴史において権力と変革の象徴とも言える存在であり、彼の施行した改革は長い年月にわたる影響を及ぼしました。彼の生涯は、当時の政治状況や社会の変化を映し出しているのです。

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