配給 (物資)

配給制度の概要

配給（はいきゅう）とは、国家などの公共機関が特定の目的に基づいて物資の配分を規制する制度です。一般的には、福祉の向上を目的とした無償の配給と、戦争や自然災害によって物資が不足した際に行う有償の配給の二つに分けられます。既存の経済システムが機能しない状況で、配給は公平に生活必需品を供給し、特定の所得階層に偏らないように努める重要な手段となります。

配給においては、切符制が広く採用されています。これは、個々人の消費総量を一定の基準（例えば金額や数量）で制限し、その枠内で商品の選択を自由に行える制度です。このような制度を「総合切符制」と呼びますが、個別商品に対する需要が不明なため、運用上の課題があります。これに対し、特定の品目の消費を抑制しつつ一定量を配布する「消費切符制」が考案され、実施されることもあります。

戦時体制における配給制

イギリス

第二次世界大戦の初期、イギリスでは配給制が直ちに導入されました。6歳以上の国民には配給手帳が配布され、指定された小売業者から食料品を購入することが義務化されたのです。1940年にはバターや砂糖、肉類などが配給制に移行し、各個人の配給量は均一でした（この方式を「均一配給」と呼びます）。しかしながら、配給量や価格は時期によって変動しました。

加えて1941年12月からはポイント配給制度が導入され、消費者は一定のポイント内で食品を選んで購入できる仕組みとなりました。特に腐敗しやすいミルクや魚はこの制度の対象外とされ、特別な供給計画が立てられました。

日本

日本でも配給制度は戦時中に導入されました。1937年のデーターによると、日中戦争を背景に生ゴムを皮切りに切符制がスタートしました。その後、国家総動員法の制定に伴って、多くの生活必需品が配給制に組み込まれていきました。1940年の価格形成中央委員会が設置されて以来、米や調味料、マッチなどが順次配給切符制の対象となりました。

1942年には特に厳しい規制が敷かれ、衣料品の切符配給制も始まりました。これにより、市民は指定された点数に基づいて衣類を購入できるようになり、妊婦や新生児には優遇措置が講じられました。

戦後の配給制度

1945年の終戦後もコメの配給は続きましたが、供給体制は非常に厳しく、1946年には大規模なデモも発生しました。以降、配給制度は段階的に緩和されていきましたが、米の生産量が消費量を上回るまで続きました。この制度は1982年まで存続し、その後も経済状況に応じてさまざまな対策が講じられています。

社会主義国における配給制

現在も配給制度は存在し、特に社会主義国では国家による供給の管理が行われています。たとえば、2017年のベネズエラでは、食肉が市場価格の1/30の価格で配分されていましたが、経済の混乱により供給は著しく不安定になっています。また、北朝鮮では1990年代の飢饉によって配給制度が崩壊し、その後も特定の階層への限定的な配給が続いています。

結論

総じて、配給制度は非常時において物資の公正な分配を目指す重要なシステムですが、それにはさまざまな課題や社会的影響が伴います。今後も、経済的・社会的な状況の変化に応じてその在り方が問われることでしょう。

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