配線用遮断器

配線用遮断器（MCCB）とは

配線用遮断器（Molded Case Circuit Breaker; MCCB）は、過負荷や短絡などの異常電流が発生した際に、電気回路を自動的に遮断し、機器や配線を保護する装置です。一般的には「ノーヒューズブレーカー」とも呼ばれますが、これは三菱電機の商品名であり、正式名称ではありません。他に「ヒューズフリーブレーカー」や「オートブレーカー」といった商品名も存在します。また、地域によっては「テンパール」と呼ばれることもあります。

配線用遮断器の構造

配線用遮断器は、合成樹脂製の箱で覆われており、前面には手動で電源をオン・オフするためのハンドルが付いています。ハンドルを上に上げると電源が入り、下に下げると電源が切れます。過電流などの異常が発生して遮断動作（トリップ）した場合、ハンドルは通常、オンとオフの中間の位置で停止します。ただし、一部のブレーカーはトリップ時にオフの位置で停止します。

内部には、電流の大きさに応じて遮断までの時間が変化する仕組みや、遮断時に発生するアークを消弧する装置が組み込まれています。配線は通常、上部に電源側、下部に負荷側が接続されます。

配線用遮断器の種類

配線用遮断器には、用途や機能に応じて様々な種類があります。

安全ブレーカー

分電盤の分岐回路などに用いられる小型のブレーカーです。単相100V回路用には2極1素子(2P1E)型、それ以外の回路には2極2素子(2P2E)型が使用されます。

単3中性線欠相保護付ブレーカー

単相3線式回路において、中性線の欠相を検出し、過電圧による機器の焼損事故を防ぐためのブレーカーです。中性線と他の線間の電圧を監視し、異常を検出すると回路を遮断します。3極2素子(3P2E)型が使用され、電源側と負荷側の接続方向が決められています。

モーターブレーカー

電動機の過負荷や焼損を保護するためのブレーカーです。電動機の始動電流（突入電流）には反応せず、過負荷電流が継続した場合に回路を遮断します。電磁開閉器の代替として使用できます。

協約形ブレーカー

JIS規格に準拠した寸法を持つブレーカーで、メーカー間の互換性があります。

漏電遮断器

漏電による漏れ電流を検出し、回路を自動的に遮断する機能を持つブレーカーです。ほとんどの製品に過電流遮断機能も備わっています。内部には漏電検出用の零相変流器が組み込まれています。

配線用遮断器の仕様

アンペアフレーム (AF)

ブレーカーの容器の大きさを示すもので、適用可能な最大定格電流を表します。AFの値が大きいほど、容器寸法や遮断容量も大きくなる傾向があります。

アンペアトリップ (AT)

ブレーカーの定格電流を示すもので、この値を超える電流が流れると遮断動作します。AFの範囲内で定格電流を可変できるタイプもあります。

トリップ時間

一次側（上流側）と二次側（下流側）の遮断器との保護協調をとるため、トリップ時間を調整できるものもあります。

配線用遮断器の性能

定格遮断容量

指定された条件下で、短絡電流を遮断できる能力を示すものです。

開閉耐久性能

指定された開閉頻度で、繰り返し開閉できる回数を示すものです。

引外し方式

過電流を検出して回路を遮断する方式には、主に以下の4種類があります。

熱動式: バイメタルの熱膨張を利用して遮断します。小型の安全ブレーカーに用いられます。
熱動-電磁式: バイメタルと電磁石を組み合わせて遮断します。
完全電磁式: 電磁石とシリコンオイルの粘性で遮断します。短絡電流に対しては即時的に遮断します。
電子式: 電子回路によって過電流を検出・制御します。

配線用遮断器の端子接続に関する注意事項

配線用遮断器の接続端子の使用方法を誤ると、重大な事故につながる可能性があります。

適切な圧着端子を使用し、端子ねじに適合したものを選択してください。
2本の配線を同じ端子に接続する場合は、大電流が流れる方を下側に接続してください。
3本以上の配線を1つの端子に接続することは原則として禁止されています。どうしても必要な場合は、2本をまとめて圧着加工し、端子部では2枚になるようにしてください。
フレームサイズが大きい場合は、相間ガードを必ず使用してください。

まとめ

配線用遮断器は、電気設備の安全を確保するために不可欠な装置です。正しい知識を持ち、適切な使用を心がけましょう。

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