配達されない三通の手紙

『配達されない三通の手紙』

『配達されない三通の手紙』は1979年に公開された日本のサスペンス映画です。エラリー・クイーンの小説『災厄の町』をもとに、野村芳太郎監督が手掛け、新藤兼人が脚本を執筆しました。原作はアメリカを舞台にしていますが、映画では山口県萩市に舞台を移し、上流家庭で育つ美人三姉妹の葛藤から始まる神秘的な事件を描いています。

あらすじ

物語は唐沢家を中心に展開されます。光政とその妻すみ江、そして三人の娘、麗子、紀子、恵子が彼らの住む旧家での日常を送っています。ある日、アメリカから来た青年ボブが唐沢家に訪れ、彼は日本文化を学ぶために光政を訪ねてきます。紀子は父が経営する銀行の行員、藤村敏行と婚約していましたが、敏行は3年前に失踪して以来、彼女は引きこもりがちになっていました。しかし、敏行が突然帰ってくると、紀子は喜びを取り戻します。

数日後、紀子の手元に敏行が智子へ送った手紙が見つかりますが、その内容が驚愕を呼び寄せます。ボブと恵子は手紙をこっそりと覗き見しますが、そこに書かれた恐ろしい予言のような内容が現実化し、紀子や智子に悲劇が襲いかかります。この手紙が引き起こす恐怖の連鎖は、彼女たちの生活を一変させ、人間関係をも揺るがせます。

スタッフとキャスト

本作の監督を務めた野村芳太郎は、1970年代後半に数多くの推理小説を映画化し、その中でも特に女性層をターゲットにした作品を手掛けることに情熱を注いでいました。キャストには、佐分利信（光政）、乙羽信子（すみ江）、栗原小巻（紀子）、松坂慶子（智子）ら豪華な俳優陣が揃い、彼らの繊細な演技が物語に深みを与えています。

制作背景

野村監督と新藤脚本家は、翻訳作品が日本で成功しにくいというジンクスを克服しようと奮闘しました。萩市が舞台に選ばれた理由は明記されていませんが、地域の魅力を活かす試みを感じる作品でもあります。製作発表は1979年7月に行われ、クランクイン後も脚本は進化し続け、最終的には物語の核心が形成されるまでに多くの調整が行われました。

宣伝と興行

本作は、当初の公開予定を早め、1979年10月6日に公開されました。興行成績は初連休で出足が鈍かったものの、口コミで広まり、徐々に観客を引き寄せ、結果的に成功を収めました。特に松坂慶子の大胆な演技が話題になり、彼女の名は宣伝活動にも大きな力を注がれました。

評価と受賞

映画は当初、賛否が分かれましたが、興行成績の好調さから徐々に評価が高まりました。特に小川眞由美は助演女優賞を獲得するなど、俳優陣の演技力も高く評価されました。この作品は、サスペンスを通じて人間の深層に迫るテーマを描いた優れた映画の一つとなりました。

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