酒井くにお・とおる

酒井くにお・とおる：兄弟漫才の軌跡

酒井くにお・とおるは、漫才史にその名を刻んだ兄弟漫才コンビです。1948年生まれの兄・くにおと、1951年生まれの弟・とおる、2人とも岩手県水沢市（現奥州市）出身。5人兄弟の末弟2人として育ちました。

くにおは高校卒業後、東京教育大学に進学。全共闘運動にも身を投じるなど、波乱万丈な学生時代を送ります。しかし、浅草松竹演芸場での社会派コントとの出会いが、彼の人生を大きく変えました。大学中退後、コントグループを経て、漫才の世界へ足を踏み入れます。

一方のとおるは、上京後、テレビ技術学校で学び、裏方の仕事に就きます。そんな中、ストリップ劇場で働く兄と偶然再会。兄の誘いを受け、1970年、みなみ良雄（後のさがみ良太）を師匠に迎え、兄弟漫才コンビ「酒井くにお・とおる」を結成しました。

当初は「コント・コマーシャル」「マンとマン」といったコンビ名で活動。体を張ったコントで観客を沸かせますが、なかなかブレイクできずにいました。転機となったのは1974年の上方（大阪）への移住です。吉本興業を経て松竹芸能へ移籍すると、関西弁をマスターし、持ち前の才能を開花させます。

1977年には『NHK上方漫才コンテスト』で優秀敢闘賞を受賞。1980年代には『お笑いスター誕生!!』に出演し、7週勝ち抜く活躍を見せました。しかし、審査員からのマンネリ指摘をきっかけに、しゃべくり漫才へとスタイルを変えていきます。

そして、運命的な出来事が起こります。『お笑いネットワーク』の収録で、若手芸人を応援する女子高生ファンに全くウケなかった経験から、絶望のあまり客席に向かって放った自虐的なボヤキが、逆に大ウケ。これがきっかけで、酒井くにお・とおるは自虐漫才の第一人者としての地位を確立することになります。

長年にわたる活動を評価され、数々の賞を受賞。『第25回YTV上方お笑い大賞』金賞、『第32回OBC上方漫才大賞』大賞など、輝かしい実績を残しました。2021年には『大阪市市民表彰・文化功労部門』を受賞しています。

くにおの独特のしゃべり方は、女装コント時代の癖や、岩手訛りを隠すために生まれたものだったと言われています。また、くにおは若い頃に結婚していましたが離婚し、晩年は一人暮らしでした。一方、とおるは結婚し、子供にも恵まれました。

2022年10月28日、くにおは慢性虚血性心疾患のため74歳で永眠。長年のパートナーを失ったとおるは、くにおの死去後も漫談などを通じて活動を続けています。

酒井くにお・とおるは、兄弟漫才のベテランとして、多くの後輩芸人に影響を与えました。その功績は、漫才史に永遠に刻まれることでしょう。彼らの独特の漫才スタイルは、多くの人々に笑いと感動を与え続け、日本の漫才界に大きな足跡を残しました。

受賞歴

1977年：「第7回NHK上方漫才コンテスト」優秀敢闘賞
1981年：「お笑いスター誕生」銀賞
1994年：「第29回OBC上方漫才大賞」奨励賞
1996年：「第25回YTV上方お笑い大賞」金賞
1997年：「第32回OBC上方漫才大賞」大賞
2021年：「第56回大阪市市民表彰・文化功労部門」受賞

出演

テレビ番組、ラジオ番組、ドラマなど数多くの番組に出演。

関連項目

テキサスコンビ
横山たかし・ひろし

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