横山たかし・ひろし

横山たかし・ひろし：ホラ吹き漫才のレジェンドと波乱万丈の生涯

横山たかし・ひろしは、1968年結成の漫才コンビです。松竹芸能に所属し、漫才界の巨匠、横山やすしの弟子として知られています。共に明蝶芸術学院出身という経歴を持ち、その独特の芸風で昭和から平成、そして令和へと続く漫才史に名を刻みました。

コンビ結成から人気獲得まで

1968年、たかしとひろしはコンビを結成。同年、大阪・新世界の新花月で初舞台を踏み出します。たかしのボケとひろしのツッコミという王道のスタイルに加え、彼らを一躍有名にしたのが「おかまどつき漫才」でした。オカマに扮したたかしが、ひろしに迫るという、当時としては斬新で話題を呼ぶスタイルでした。このスタイルで1971年にはNHK上方漫才コンテスト新人賞を受賞するなど、順風満帆なスタートを切ります。しかし、当時の放送倫理基準に抵触する部分もあったため、テレビやラジオへの出演機会は限られ、寄席を中心に活動していました。

ホラ吹き漫才の誕生と人気低迷期

その後、たかしが神戸松竹座で、当時人気だった歌手・藤圭子の愛人だと冗談を言ったところ大ウケ。これを機に、田中角栄元首相の大言壮語をネタに取り入れるなど、独特の「ホラ吹き漫才」を確立していきます。たかしの派手な燕尾服も、テレビで見た園遊会のニュースを参考に考案されたものです。生活苦をネタにした漫才では、客から同情して現金が渡されたこともあったそうです。しかし、漫才ブームにも乗れず、1980年代後半には解散も考えた時期もありました。

再ブレイクと上方漫才大賞受賞

1990年代に入ると、やしきたかじんが彼らの漫才の面白さを再評価。番組にゲスト出演する機会が増え、再び人気が復活しました。たかしは「たかじんのお陰で飯が食えるようになった」と感謝を述べています。1994年には上方漫才大賞を受賞。その実力と人気を改めて証明しました。また、デビュー当時、たかしは当時人気絶頂だったオセロの中島知子と松嶋尚美に「10年間頑張ったら100万円やる」と約束し、10年後には約束通り（値引きして）10万円を贈っています。

健康問題と車椅子での舞台復帰

2014年にはたかしが腰部脊柱管狭窄症を発症。約1年間の活動休止を余儀なくされました。リハビリに励みましたが、下半身の自由が利かなくなり、舞台復帰が危ぶまれた時期もありました。しかし、後輩芸人・ますだおかだの増田英彦の発案で、金色の車椅子を使った舞台復帰を実現。2015年3月、車椅子をネタに織り込んだ漫才で舞台に復帰しました。その後も健康問題を抱えながらも、2018年12月には大阪でのイベントに出演。これがたかしの生前最後の舞台となりました。

横山やすしとの師弟関係

横山たかし・ひろしは、当初吉本興業に所属していましたが、横山やすし師匠から受ける過酷な暴力から逃れるため、正司敏江・玲児を頼って松竹芸能に移籍しました。やすしから殴られるのはたかしが多く、時には命の危険を感じるほどだったと語られています。電話で呼び出されたり、やすしの気まぐれな行動に翻弄されながらも、師弟関係は深く、やすしの死後も深い敬意を表していました。やすしから受け継いだボケとツッコミの入れ替わる芸風は、彼らの漫才の大きな特徴となっています。

たかしの死去と新たな出発

2019年6月1日、たかしは多臓器不全のため70歳で死去。8月には「横山たかしを偲ぶ会」が開催されました。たかしの死後、ひろしは妻の春けいこと漫才コンビ「横山ひろし・春けいこ」を結成。夫婦漫才として新たな道を歩み始めました。

芸風とエピソード

彼らの漫才は、古典落語の弥次郎兵衛にも通じるホラ話と、それを鋭く突くひろしのツッコミが特徴です。たかしの豪勢な衣装（実際は安価なもの）も、漫才の笑いをさらに引き立てています。舞台では下ネタも織り交ぜ、観客を沸かせました。

まとめ

横山たかし・ひろしは、数々の困難を乗り越え、独自の漫才スタイルで観客を魅了し続けたコンビです。師匠である横山やすしとの関係、健康問題、そしてたかしの死後も、彼らの物語は多くの人々に感動と笑いを届け続けています。彼らの漫才は、日本の漫才史に輝く、かけがえのない存在と言えるでしょう。

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