酒井忠美

酒井忠美：幕末の藩主から明治の華族へ

酒井忠美（さかい ただよし）は、江戸時代末期の大名であり、明治・大正期には日本の華族として名を残しました。彼は安房国（現在の千葉県南部）の勝山藩の第9代、そして最後の藩主であり、初代にして最後の知藩事も務めました。

生涯

安政5年（1858年）10月29日、第8代藩主・酒井忠一の長男として生まれました。万延元年（1860年）に父が亡くなったため、わずか3歳で家督を継承することになります。当時の勝山藩は、佐幕派と尊王派が対立し、戊辰戦争においてもその対立が表面化しました。最終的には新政府に恭順し、木更津に出兵しています。慶応4年（1868年）5月には、従五位下、大和守に叙任されました。

明治2年（1869年）5月、同名の藩（越前勝山藩）が存在したため、加知山藩と改名しました。版籍奉還後の6月には知藩事となり、華族に列せられます。しかし、明治4年（1871年）7月14日の廃藩置県により免官となり、新たに加知山県知事に任命されますが、同年11月の廃県によって再び免職となりました。

明治12年（1879年）には、嫡男の忠勇に家督を譲り隠居しました。大正12年（1923年）3月13日に66歳で亡くなっています。彼の死後、明治17年（1884年）に忠勇は子爵となりますが、明治30年（1897年）に偽造手形行使の罪で告訴されたため、爵位を返上するという不幸な出来事も起こっています。

系譜

父：酒井忠一
正室：久宇 ー 酒井忠禄の娘
子女：
酒井忠勇
酒井忠尚
福島茂富夫人
三井慶夫夫人

参考文献

松田敬之『〈華族爵位〉請願人名辞典』吉川弘文館、2015年（平成27年）。ISBN 978-4642014724。

酒井忠美は、幕末から明治という激動の時代を、藩主、知藩事、そして華族として生きた人物でした。彼の生涯は、日本の近代化の過程における地方政治の変遷を垣間見ることができる貴重な事例と言えるでしょう。

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