酒屋役

酒屋役について

酒屋役（さかややく）は、室町幕府によって課された京都地域における酒屋に対する税金の一形態です。鎌倉時代中期に酒屋が商業的な形態として登場するも、鎌倉幕府の方針によりその営業は制限されていました。しかし、京都では延暦寺を始めとする有力な寺社が影響力を持ち、朝廷も臨時の税金である壷銭を通じて酒屋の営業を許可していました。

後醍醐天皇の元亨2年（1322年）以降、壷銭の通常の課税化についての議論が行われましたが、延暦寺側の反発もあって実現には至りませんでした。南北朝時代に入ると、造酒正によって酒屋に対する税の徴収が開始されましたが、酒屋側も延暦寺の支援を受けて課税逃れを試みることがあり、対立が続くこととなりました。

室町幕府はその財政基盤を主に御料所からの収入に頼っていましたが、連続した内乱の影響で年貢の輸送が滞り、南朝軍による占拠や自軍への恩賞という形でその収入が減少していったのです。幕府はこの状況を打開するため、酒屋への課税に目を向けることとなりました。

造酒正や延暦寺は、この新たな課税に強く抵抗しましたが、足利義満のもとで築かれた強力な軍事力によって、幕府は次第にその抵抗を打ち破ります。明徳4年（1393年）、幕府は「洛中辺土散在土倉并酒屋役条々」という新たな法令を発布し、延暦寺などの有力権門の権益を否定するとともに、酒屋に対する課税を最低限に制限しました。その代わりに、年間6,000貫を酒屋と土倉で納めることを条件に、他の課税からの免除が認められました。

税の対象となったのは、酒壷10壷以上の酒屋で、記録によれば1つの酒壷あたり100文の税がかけられたとされています。この課税制度は、大きな行事や建築に際しては臨時課税が行われることもありました。当初は幕府が直接その税金を徴収していましたが、後に有力な酒屋が納税を担当する形に変化し、数十軒単位で酒屋役を徴収する方式となりました。

また、室町時代の後期には、「請酒」と呼ばれる小売専門の酒屋や地域からの名酒の流入もありましたが、幕府はそれらに対しても課税を行いました。応仁の乱が発生した後には、酒屋への課税収入は低迷しましたが、室町幕府の末期までこの制度は継続され、さらには織田政権以降も類似の課税制度が残されることとなりました。

関連項目

• - 酒税

このように、酒屋役は単なる税金に留まらず、当時の政治状況や商業の発展を反映した複雑な制度なのです。

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