酸化トリブチルスズ

酸化トリブチルスズについて

酸化トリブチルスズ（TBTO）は、有機スズ化合物の一種であり、その化学的特性から多様な用途に利用されてきました。主に船底塗料や漁網防汚剤、さらには農業用の殺菌剤として広く知られていました。1950年代から使用が始まり、1960年には農薬登録を取得し、梨やネギ、タマネギの黒斑病対策としての効果が認められました。

用途

酸化トリブチルスズの最も著名な用途の一つが、船底塗料です。船舶の底面や漁網に貝類などの付着を防ぐために用いられてきました。この用途は、船舶の性能向上や保全に寄与しており、漁業や海運業界で重宝されてきました。また、この化合物は木材防腐剤としても利用されており、靴や靴下、さらにはおむつカバーなどの菌の繁殖を防ぐための材料としても役立ちました。しかし、農薬としての登録は1977年に失効しています。

安全性の問題

酸化トリブチルスズは用いられることが多かった一方で、その安全性は厳しく問われてきました。日本では毒物及び劇物取締法によって劇物に指定されており、取り扱いには注意が必要です。ラットを用いた実験では、経口投与での半数致死量（LD50）は127-234mg/kg、皮下投与では605mg/kgと算出されています。また、皮膚や目、呼吸器への強い刺激性が確認されており、特に水生生物に対して致命的な影響を与えることが知られています。たとえば、マスノスケにおける96時間半数致死濃度（LC50）はわずか1.5μgと、極めて低い値です。

規制の動き

これらの安全性の懸念を受けて、1987年にはイギリスで船底塗料としての使用が禁止され、アメリカでは環境保護庁によってその認可が取り消されました。さらに、日本国内でも全国漁業協同組合連合会や全国かん水養魚協会が消費者団体からの要請に応え、使用の自粛を決定しました。2001年には国際海事協会がTBT系塗料の船舶への塗布を禁止し、2008年からは同系塗料を使用した船舶の航行も制限されています。

結論

酸化トリブチルスズは、過去には多岐にわたる用途で利用されていましたが、その安全性に関する問題が明らかになるにつれて、規制が強化されています。持続可能な発展の観点からも、このような有害物質の使用を見直すことは今後の重要な課題と言えるでしょう。環境に優しい代替品の選定や使用法の工夫が求められています。

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