マスノスケ

マスノスケ（キングサーモン）の詳細解説

マスノスケ（Oncorhynchus tshawytscha）は、サケ科に属する大型の魚で、その堂々たる風格から「キングサーモン」とも呼ばれています。この記事では、マスノスケの生態、分布、利用、そして近年話題となっている遺伝子組み換えへの利用まで、詳しく解説します。

分布と生息域

マスノスケは、サケ科の中でも特に冷たい水を好む性質を持ち、アラスカからカムチャツカ半島にかけての北太平洋を中心に分布しています。オホーツク海や日本海北部でも見られますが、その数はアラスカ沖に集中しています。日本国内では、ロシア方面から回帰する個体が北海道の太平洋沿岸でわずかに漁獲される程度で、恒常的な産卵場所となる河川は確認されていません。ただし、佐渡島や東北地方以北の河川で捕獲された記録もあります。

生態と生活史

マスノスケは、孵化後、海洋で1～5年ほど生活し、4～6年で成熟します。オスの中には、海洋生活が1年程度の小型で早熟な個体も現れます。成熟したマスノスケは、産卵のために生まれた川へと回帰します。アラスカのユーコン川産の個体では、遡上距離が1,000kmを超えるものも存在します。

寄生虫の分析から、アジア系、カムチャッカ系、アメリカ系の3つの系統群が存在することが判明しており、それぞれ遡上時期、産卵場所、回遊海域などの生活様式が異なっています。

1900年代には、アメリカからニュージーランド南島に移植され定着し、ワカティプ湖などでは陸封型としても生息しています。

海洋型と河川型の2つの生活型があり、それぞれ生活史が大きく異なります。海洋型は孵化後すぐに降海し、沿岸域で生活した後、産卵直前に母川へ戻ります。一方、河川型は1～2年淡水で過ごした後降海し、沖合で越冬を繰り返した後、より上流まで遡上します。

別名と名前の由来

英語圏では、キングサーモンの他に、タイイーサーモン、スプリングサーモンなどの地方名があります。日本語では、スケ、スケマス、オオスケなどの別名があり、これらに含まれる「スケ」は、国司の四等官の一つである「介」に由来するとされています。サケやマスよりも巨大なマスノスケを、国衙に君臨する介に例えたものです。また、東北地方には鮭の大助の伝承があります。

鮮魚店では「キングサーモン」として販売されていることが多いですが、アトランティックサーモンも同じ名前で販売されている場合があります。

特徴と用途

マスノスケは、サケ科魚類の中でも最大級の大きさを誇り、過去には体長1.47メートル、体重57キログラムの記録もあります。通常漁獲される個体は体長90センチメートル、体重10キログラム前後です。体色は、背面が青緑色で黒色点が散在し、腹部は銀白色をしています。尾鰭には銀色の放射状の模様と黒色斑があるのが特徴です。他のサケ・マス類と比較して、体に対する目の大きさがやや小さめです。

マスノスケは、サケ類の中でも特に脂肪分が多く、美味とされています。主な用途は、缶詰、塩漬けの切り身（焼き魚用）、燻製（スモークサーモン）、刺身などです。卵はイクラなどに加工されます。

交配種と資源量

ニジマスとの交配種である「富士の介」は、山梨県で地域ブランド化されています。

マスノスケは、魚食性が強く、ニシンやイカナゴなどを捕食するため、食物連鎖の上位に位置しています。そのため、動物プランクトンを主食とする他のサケ類に比べて資源量は少ないです。

1970年代には400万尾の漁獲量がありましたが、2000年頃には100万尾まで減少しています。沖合サケマス漁の禁漁措置が取られたものの、資源減少には歯止めがかかっていません。ダム建設による淡水環境への影響や、表面水温の変動などが原因として考えられていますが、詳しい原因は解明されていません。

遺伝子組み換えへの利用

バイオベンチャー企業によって、マスノスケの成長ホルモン遺伝子を組み込んだ遺伝子組み換えサケ「アクアドバンテージ・サーモン」が開発されました。このサケは、成長が早く、大型になる特徴を持ちます。アメリカやカナダで食品としての認可を受けていますが、環境団体からは反対の声も上がっています。

まとめ

マスノスケは、その大きさ、味、そして遺伝子組み換えへの利用など、様々な側面から注目される魚です。資源保護の重要性を認識し、持続可能な利用を目指していく必要があります。

もう一度検索