醒井宿

醒井宿：清らかな水が紡ぐ歴史と文化

醒井宿（さめがいしゅく）は、滋賀県米原市醒井地区に位置する、かつての中山道61番目の宿場町です。古代から交通の要衝として栄え、日本武尊（ヤマトタケル）の伝説にも登場する「居醒の清水（いさめのしみず）」が地名の由来とされています。2015年には、その豊かな水辺景観が評価され、文化庁の「日本遺産」に認定されました。

水とともに生きる宿場町

醒井宿の魅力は、何と言ってもその清らかな水にあります。霊仙山からの豊富な湧水は、地蔵川となって町を潤し、美しい景観を育んでいます。地蔵川には、水温15度前後の清流にしか育たないバイカモ（梅花藻）が群生し、5月中旬から9月にかけて可憐な白い花を咲かせます。また、トゲウオ科の希少種であるハリヨ（針魚）が生息しており、地域住民による保護活動も盛んです。

江戸時代、醒井宿は中山道の宿場町として整備され、多くの旅人で賑わいました。天保14年（1843年）には、138軒の家と539人の人々が暮らし、本陣や脇本陣、旅籠などが軒を連ねていました。宿場内には、地蔵川沿いに洗い場「かわと」が設けられ、生活用水として利用されていました。

醒井宿の歴史

醒井の地名は、『古事記』や『日本書紀』に登場する「居寤清泉」や「居醒泉」に由来すると伝えられています。古代には東山道の宿駅として機能し、中世には鎌倉時代の日記紀行『東関紀行』や歌人阿仏尼の『十六夜日記』にもその名が登場します。室町時代の紀行文『小島のくちずさみ』には、湧き出る水の清らかさが記されています。

江戸時代には中山道の宿場町として整備され、慶長7年（1602年）に伝馬制が設けられました。宿場には本陣や脇本陣、問屋場などが置かれ、多くの旅人が行き交いました。醒井宿の名物として知られた「醒井餅」は、旅人のお土産として人気を集めました。

史跡と見どころ

醒井宿には、歴史と文化を感じさせる史跡や見どころが数多く残っています。

居醒の清水: 地蔵川の源流となる湧水で、日本武尊が病から回復したという伝説があります。環境省の「平成の名水百選」にも選ばれています。
地蔵川: バイカモが咲き誇る清流で、ハリヨの生息地としても知られています。
加茂神社: 江戸時代に遷座した神社で、日本武尊像が安置されています。
醒井地蔵堂: 石川家成が建立した地蔵堂で、石造地蔵菩薩坐像が安置されています。
了徳寺のオハツキイチョウ: 葉に種子をつける珍しいイチョウで、国の天然記念物に指定されています。
醒井木彫美術館: 上丹生出身の彫刻家、森大造の作品を展示する美術館です。
* 醒井宿問屋場（旧川口家住宅）: 江戸時代の問屋場の建物を保存した資料館です。

醒井を巡る

醒井宿は、JR醒ケ井駅から徒歩圏内にあり、公共交通機関でのアクセスも便利です。宿場内には、歴史的な町並みが保存されており、ゆっくりと散策を楽しむことができます。また、地蔵川沿いには遊歩道が整備されており、美しい自然を満喫できます。

醒井宿の周辺には、醒井養鱒場や松尾寺などの観光スポットもあります。醒井養鱒場では、ニジマスやビワマスなどの養殖を見学でき、釣りや食事も楽しめます。松尾寺は、役小角が開山した古刹で、九重塔や本堂跡などの史跡があります。

醒井宿は、豊かな水と歴史が織りなす魅力的な場所です。ぜひ一度、足を運んでみてください。

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