里見宗次

里見宗次について

1904年11月2日、大阪府の帝塚山に生まれた里見宗次（さとみ・むねつぐ）は、日本のグラフィックデザイナーとしての名声を築いていきました。彼の人生は、日本とフランスを行き交いながら、アートの各分野で多くの影響を与える歴史的なものといえます。

幼少期から留学まで

里見は実業家の家に生まれ、五人兄弟の末っ子として育ちました。幼い頃から絵に親しみ、1914年には桜島噴火を題材にしたポスターのコンクールで金賞を受賞しています。中学時代には飛び級で卒業し、東京美術学校を目指して準備を進めましたが、皮肉なことに帰国したばかりの先輩、小出楢重の影響を受け、1922年にパリへ渡ることとなりました。エコール・ド・パリの全盛期にあたるこの期間は、里見にとって造詣を深める貴重な時間だったのです。

フランス滞在中、アカデミー・ジュリアンで勉強し、後にパリ国立高等美術学校（エコール・デ・ボザール）に進学。最初の日本人入学者という輝かしい業績を成し遂げます。在学中には数々の受賞歴を持ち、特にデッサンでの優秀な成績が光ります。1925年にはルーマニア人のマリワラと結婚。彼の人生における重要な出会いの一つとなりました。

商業美術家としての成功

1927年、父の死を受け、生活のために商業美術家としての道を選びます。ムネ・サトミの名で知られるようになり、初めはショパン広告会社、その後フレガット社でアトリエ課長として働くことになりました。この職で多くのポスターを手がけ、特にゴロワーズやフォア・ド・パリのポスターコンクールで一等賞を獲得するなど、名声を高めていきます。カッサンドルの技法から影響を受けた里見は、アール・デコを踏襲したスタイルで作品を生み出しました。

1934年には、国際商業美術交歓展にポスターを出品し、日本で初めて自身の作品を発表。そして1935年、パリで開催された日本ポスター展を主催。彼は日本の広告美術の先駆者として位置づけられることとなります。1936年には日本に帰国し、各種の依頼を受ける傍ら、在留日本美術家協会の結成にも関与しました。特に鉄道省の『JAPAN』ポスターは高評価を受け、名誉賞を受賞しています。

戦争を経てタイと再びパリへ

1940年、第二次世界大戦の影響で帰国。ニューヨーク万国博覧会のデコレーションを手掛け、同時にアルコのポスターを制作しました。その後、教育活動にも従事し、多摩美術大学で教えることになります。しかし日本語とフランス語のバイリンガル能力を買われて外務省にてサイゴンに渡ることに。1943年にはタイに派遣され、宣伝部長として活動を開始しました。

1945年には終戦を迎え、収容所での生活を余儀なくされましたが、解放後はタイ国劇場で舞台装置制作などに従事。最終的に1951年にパリへ戻ります。ここから里見は健康食品展や政府広報のポスターを制作し、1960年代には多くの国際的な食品展のポスターを担当しました。彼のデザイン活動は衰えることを知らず、数多くの作品を世に送り出しました。

最後の歳月と遺産

1974年には日本政府から勲三等瑞宝章を授与され、その後も精力的に活動を続けました。1996年、奈良県で91歳の生涯を閉じ、彼の豊かな創作活動が多くの人々に感銘を与えています。里見宗次の生涯は、アートとデザインの世界における日本の存在を広く知らしめるものとなりました。彼の作品は今もなお、多くの人々に愛され続けています。

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