重力式アーチダム

重力式アーチダム：構造と特徴

重力式アーチダムは、コンクリートダムの一種であり、重力式コンクリートダムとアーチ式コンクリートダムの両方の特性を兼ね備えています。アーチ式ダムを建設できるほど岩盤が強固ではないものの、重力式コンクリートダムよりもコンクリートの使用量を削減できるという利点があります。

構造

重力式アーチダムは、アーチ状の構造によって貯水池からの水圧を両岸の岩盤に分散させます。このアーチ構造に加えて、ダム自体の重さによっても水圧を支えるため、安定性が高まります。

世界の代表的な重力式アーチダム

サヤノシュシェンスカヤダム（ロシア）
堤高：242m
総貯水容量：約313億m3
世界最大の堤高を誇る重力式アーチダムです。
フーバーダム（アメリカ合衆国）
堤高：221m
貯水容量：約352億m3
ニューディール政策のきっかけとなったダムとしても知られています。

日本の重力式アーチダム

日本で最初に建設された重力式アーチダムは、チッソが宮崎県の五ヶ瀬川水系に建設した芋洗谷ダムです。戦後には大規模なダムが建設され、中国電力が岡山県の高梁川水系に建設した新成羽川ダムが最大規模を誇ります。

しかし、アーチ式コンクリートダムと同様に、強固な岩盤が必要となるため、建設場所が限られています。1974年に山口県の阿武川ダムが完成して以降、新たな建設例はなく、日本ダム協会の調査によると、全国に12基しか存在しない珍しい形式のダムとなっています。

重力式アーチダムの現状

重力式アーチダムは、建設コストと安定性のバランスが取れたダム形式として、かつては多くのダムが建設されました。しかし、近年では建設に適した場所が少なくなっていることや、環境への配慮などから、新たな建設はほとんど行われていません。既存のダムの維持管理が重要な課題となっています。

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