重城保

重城保：地方行政と開墾事業に生涯を捧げた名主

重城保（じゅうじょう たもつ、1833年～1912年）は、現在の千葉県木更津市高柳で代々名主を務めた家に生まれた人物です。幼い頃は安次郎と名乗っていました。

若い頃は、正木幽谷や大槻磐渓といった著名な学者に師事し学問を修めましたが、その後は故郷に戻り、家業である名主の職務に励みました。明治維新後、明治5年（1872年）には木更津県の郡中地券係に任命され、当時の県令であった柴原和と知り合います。

その後、千葉県が成立すると、柴原県令はそのまま千葉県令となり、重城保は柴原県令が進めていた重要な政策である育児政策の中枢を担う育児取締頭取の職に就きました。これは、当時の行政における重要な役割であり、重城保の行政能力の高さを示しています。

明治9年（1876年）、千葉県会が設置されると、重城保は初代県会議長に選出されました。この時代は自由民権運動が活発化し、県令と県会が対立する事例が各地で発生していました。しかし、重城保は県令と県会の双方に冷静な対応を促し、対立の激化を防ぐことに尽力しました。その手腕は、地方行政における貴重な経験と高い政治的バランス感覚を有していたことを示しています。

県会議長を退任後も、明治11年（1878年）には安房郡、明治15年（1882年）には君津郡の郡長を歴任し、地方行政の要職を歴任しました。その経験は、後に彼を衆議院議員へと導く礎となりました。

明治23年（1890年）、第1回衆議院議員総選挙において、地元の人々からの強い支持を受け、衆議院議員に当選しました。しかし、重城保自身は農民であるという自覚を強く持ち、政治的な野心を抱いてはいませんでした。そのため、1期限りで議員を辞職し、公職からは身を引きました。

政治家としての活動を終えた後も、重城保は故郷の発展に貢献するため、開墾事業に尽力しました。自ら率先して開墾事業の先頭に立ち、地域社会の発展に貢献しました。これは、彼の人格の高さと、地域社会への貢献を重視する姿勢を示すものです。

晩年まで、故郷のために尽くした重城保が残した日記は、『重城保日記』として刊行され、貴重な歴史資料となっています。この日記は、幕末から明治時代にかけての地方農村の生活や社会情勢を知る上で、非常に重要な資料となっています。重城保の生涯は、地方行政に携わりながら、常に地域社会の発展を願い、そのために尽力した、誠実で実直な人物像を私たちに示しています。

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