野上真司

野上真司氏は、1975年4月3日、大阪府池田市に生まれました。身長173cm、血液型A型。池田市立池田中学校、浪速工業高等学校（現在の星翔高等学校）を卒業後、プロボクシングの世界に進みました。ボクサーとしてのキャリアは大阪帝拳ジムでスタートし、1998年にプロテストに合格。翌1999年2月にプロデビューを果たしました。

現役時代

プロ転向後、着実にキャリアを積み重ね、2002年には海外ライセンスを取得。同年12月15日には、地元大阪府池田市の五月山体育館で開催された興行において、メキシコのホセ・マルティネスと対戦。4ラウンドKO勝利を収め、WBOアジア太平洋スーパーフェザー級の王座を獲得しました。この活躍により、2003年1月から2004年2月にかけてWBO世界スーパーフェザー級ランキングに名を連ね、最高位は11位（2003年10月）を記録しています。

引退後の転機と活動

プロボクサーを引退後、野上氏は整骨院での勤務やバー経営などを経験しましたが、パニック障害とうつ病を発症し、一時は困難な時期を過ごしました。2018年時点でも通院が続いていたといいます。しかし、そんな中でボクシングが再び彼を外へと導く存在となります。2008年にトレーナーとしてボクシング界に復帰。「迷いもあったが、必要とされることが有難かった」と後にその時の心境を語っています。

トレーナーとしての才能を開花させ、多くの選手の育成に携わりました。特に、当時ノーランカーだった大沢宏晋選手をOPBF東洋太平洋フェザー級王者に育て上げたことは注目を集めました。また、元WBO・WBC（暫定）女子世界フライ級王者の好川菜々選手、元WBOアジア太平洋スーパーフライ級暫定王者の川口勝太選手など、数々のトップ選手を指導しています。

海外での活動も積極的に行い、2011年11月にはラスベガスで行われたマニー・パッキャオ対ファン・マヌエル・マルケスのWBO世界ウェルター級タイトルマッチにおいて、マルケス選手のメディカルトレーナーとしてチームに帯同。2012年には、WBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチで粟生隆寛選手に挑戦したガマリエル・ディアス選手の戦略面をサポートし、王座奪取に貢献しました。ディアス選手とは、野上氏が現役時代にスパーリングパートナーを務めた縁もありました。2012年12月にも、パッキャオ対マルケスの第4戦に再びマルケス陣営として同行し、マルケス選手の雪辱勝利を支えました。

一方で、2013年1月には所属選手のタイトルマッチに関するJBCへの虚偽報告により、セコンドライセンスを取り消されるという経験もしています。その後は雅ボクシングジムに移籍し、マネージャーとして活動。2016年3月12日付で約3年ぶりにセコンドライセンスを再交付され、同年4月29日の興行から現場復帰を果たしました。

チャンピオン夫婦とジム設立

私生活では、マネージメントも担当していた元世界王者の好川菜々選手と2015年7月7日に入籍。日本ボクシング史上初となる、王座獲得経験者同士の「チャンピオン夫婦」として大きな話題となりました。

2018年5月24日には、大阪府堺市にディアマンテボクシングジムを設立し、オーナーに就任しました。妻である好川菜々氏が同ジムの会長を務めています。野上氏は自身の病気経験を活かし、ジムの看板に「不登校やいじめの相談に乗ります」と掲げるなど、単なるボクシング指導の場に留まらない、地域に根差した活動を目指しています。

病気との闘いは続き、2021年の新型コロナウイルス第5波の際には自身も感染。当時は受け入れ病院が少なく、妻が臨月を迎えている状況で生命の危機に瀕した経験も乗り越えています。

社会貢献活動と受賞歴

野上夫妻は、ボクシング界での功績に加え、多岐にわたる社会貢献活動でも知られています。

2015年、メキシコのWBC本部にて、日本で行ってきた病気と闘う人々や子どもたちとの触れ合いといった慈善活動・社会貢献が評価され、「WBCベストカップルアワード」を受賞しました。2016年には、日本初のチャンピオン夫婦として大阪府警・大阪府交通安全対策協議会の「飲酒運転防止プロジェクト・平成27年度広報開発モデル」に就任。飲酒運転撲滅キャンペーンのイメージキャラクターとしてポスターに登場したり、一日警察署長を務めたりするなど、積極的な啓発活動を行い、同協会より感謝状が贈られています。また、トレーナーとして堺市内のジムから初の世界チャンピオンを輩出した功績が評価され、堺市長より感謝状を贈呈されました。

2017年には、メキシコで発生した地震の被災者支援としてWBCの慈善団体に義援金を送ったことが称えられ、WBCケアーズ特別賞を受賞。WBC会長からは「ボクサーは強いだけでなく、人々を助け合う優しさも必要だ。彼女たちはボクサーである前に素晴らしい人間性を示してくれた」とコメントされました。

2019年には、WBO年次総会で「WBOで唯一のチャンピオン夫婦としてジュニア育成に力を入れる傍ら、警察や消防と協力して飲酒運転撲滅や火災予防運動に取り組むなど、誇り高き活動を行っている」と紹介され、「WBOカップルアワード」として記念のミニベルトを贈られています。さらに、2020年の年間優秀選手表彰式では、ボクシング経験を活かしたボランティア活動や、難病患者、養護施設の子どもたちへの支援活動が評価され、「ダイヤモンドフィスト賞」を受賞しました。

その他にも、出身地である池田市の観光大使（2018年）や、堺消防局、奈良県郡山警察署の一日署長を務めるなど、地域や社会への貢献活動を続けています。また、大阪府警の痴漢・盗撮撲滅キャンペーンポスターモデルにも起用されました。

メディア出演

関西テレビの番組「よーいドン!」の「となりの人間国宝さん」には、2017年と2024年の二度にわたって認定されており、弟子の安村可麗選手も認定されたことから、番組内では珍しい師弟での国宝さんとして紹介されました。

プロボクサーとして王座を獲得した実績に加え、トレーナー・マネージャーとして多くの才能を育て、日本ボクシング界に新たな歴史を刻むチャンピオン夫婦として、そして社会貢献活動や自身の経験に基づくジム運営を通じて、多方面にわたる活動を展開しています。

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