野中小百合

1959年3月27日、福岡県八幡市（現在の北九州市）に生を受けた野中小百合（本名：野中泰子）は、一時期「糸川蛍子」という芸名でも活動した元アイドル歌手です。

幼い頃から歌に強い関心を持ち、特に演歌を元気いっぱいに歌うことを好んでいました。その歌好きが高じ、親しい友人に誘われて地元のテレビ局、テレビ西日本が運営するTNC児童合唱団に加わります。しかし、誘ってくれた友人の退団後、自身も入団から約一年あまりで合唱団を離れることとなりました。

中学進学後も歌への情熱は衰えず、近所の方に誘われて民謡を習い始めます。やがて友人から博多にある渡辺プロダクション直営の東京音楽学院博多校の存在を知らされ、1973年、中学3年生の時に同校に通い始めました。学院在籍中、間もなく講師にNETテレビ（現テレビ朝日）のオーディション番組『スター・オン・ステージ あなたならOK!』への出場を勧められます。九州予選を見事突破し、東京で開催された決戦大会へ進出、そこで3週連続で勝ち抜く実力を見せました。

高校は地元の成美高等学校（現在の星琳高等学校）商業科に進学し、引き続き東京音楽学院にも通い続けました。高校一年生の冬、東京音楽学院博多校の代表として渡辺プロダクションのオーディションに挑み、合格。これにより同プロダクションへの所属が決定し、1975年3月に上京、文化女子大学附属杉並高等学校（現在の文化学園大学杉並高等学校）に転校しました。

1975年にシングル『恋の誕生日』で歌手デビューを果たします。翌1976年には、TBSテレビで放送されたバラエティ番組『笑って!笑って!!60分』内のショートドラマ『新・哀愁学園』において、自身の楽曲『ふたりの竹とんぼ』が劇中歌として採用されるなど、活動の幅を広げました。

テレビ番組では、『笑って!笑って!!60分』（TBS系）をはじめ、司会者としても活躍しました。『オールスター親子で勝負!』（日本テレビ系）では司会を務め、『クイズ・ドレミファドン!』（フジテレビ系）では、五十嵐夕紀の一時降板に伴い、3代目の女性司会者に起用されています。糸川蛍子に改名後も、『民謡をあなたに』（NHK総合）にレギュラー出演するなど、多方面で才能を発揮しました。ラジオパーソナリティとしても、『いすゞ歌うヘッドライト〜コックピットのあなたへ〜』（TBSラジオ）を担当。また、ハウス食品などのCMにも出演しています。

1980年、レコード会社を移籍したのを機に、芸名を糸川蛍子（いとかわ けいこ）に改名。糸川蛍子名義でのシングルもリリースされています（なお、1981年3月21日発売のシングルでは、B面の『むすめ小原節』のみ本人の歌唱で、A面は横内正の歌唱です）。しかし、その約一年後の1981年頃、惜しまれつつ芸能活動から身を引きました。

1975年当時の公表プロフィールによると、身長は158cmでした。趣味は読書とイラストを描くこと。特に読書においては、安部公房や立原正秋といった作家の作品を好み、安部公房についてはほとんどの作品を読破するほどだったといいます。また、好きな漫画家として萩尾望都の名を挙げていました。歌手としてだけでなく、多才な一面も持ち合わせていた人物です。

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