野人女直

野人女直とは

野人女直（やじんじょちょく）は、明の末期から清の初期にかけて東北地方に居住していた女直の一集団です。この集団は、南西に位置する建州女直や北西の海西女直を除いた地域に分布しており、特にウェジ部、ワルカ部、クルカ部の三つの部があります。これらは、マンジュ政権の時代には「東海三部」としても知られていました。1596年から1625年の間、ヌルハチが彼らに対して軍を派遣していました。

歴史的背景

明初から中期にかけて女直は「建州」と「海西」の二つに大別されていましたが、「野人女直」という名称は万暦年間に登場します。この時期、女直内部ではフルン四部が成長しており、海西という表現がアムール川中流域の女直を含む広範なものであったのが、徐々にフルン四部に焦点が当たるようになりました。この変化に伴い、フルン四部を含まない女直について「野人女直」という新たな用語が生まれたと考えられています。

また、李氏朝鮮では、建州女直を除く女直を「兀良哈」と「兀狄哈」の二つに分け、さらにウディゲをフルン＝ウディゲ、クルカ＝ウディゲ、諸姓ウディゲに分類しました。中でもワルカ部、クルカ部、ウェジ部は「野人女直」に該当し、17世紀の満洲語の文献に記載されている「東海三部」とも多くの共通点があります。

言語と文化

アムール川下流域の統治中心地であったヌルカン（奴児干）には、漢文、モンゴル語、女真語の三つの言語で刻まれた碑文が存在し、「野人」という語に対応するモンゴル語や女真語は「Udigan」「Udigen」とされ、これはツングース語で「森の人」という意味の「weji-kai」が変化したものと推測されています。この点から、「野人女直」と呼ばれた集団は、遼代から存在した「生女真」の後裔であると考えられています。

集団の構成

ワルカ部

ワルカ部は、長白山以東の地域、特にトゥメン・ウラ（図們江）流域に住んでいました。朝鮮ではオランカイと呼ばれ、永楽初頭には毛憐衛に属する部族が形成されました。

クルカ部

クルカ部は、スンガリ・ウラ（松花江）およびムダン・ウラ（牡丹江）の流域に居住しており、元代に存在した呼里改路（現在の黒龍江省ハルビン市依蘭県）に由来します。

ウェジ部

ウェジ部は黒水部とも関連し、特に北の地域に居住していました。彼らの集落は多くが清朝の侵攻によって滅ぼされました。

野人女直の歴史的意義

「野人女直」の存在は、女真族の多様性や彼らの歴史における役割を理解するうえで重要です。彼らの生活様式、文化、そして言語は、当時の社会と密接に結びついており、特に満洲語の資料は、彼らの生活や変遷を知るための貴重な資料となっています。

明と清の交代期における野人女直の存在や活動は、その後の満洲族の形成や流れにも大きな影響を与えたとされ、歴史的な研究が進められています。

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