野原一夫

野原一夫：編集者、作家としての生涯

野原一夫（のはら かずお）は、1922年3月30日に東京府で生まれ、1999年7月31日に没した編集者、作家です。彼の生涯は、激動の昭和時代と深く結びついています。

学歴と戦争体験

野原は東京府立第五中学校（現在の都立小石川高等学校）から浦和高等学校文科乙類に進み、東京帝国大学文学部独逸文学科を卒業しました。学業半ばの1943年12月には学徒出陣し、二等水兵として横須賀市の武山海兵団に入隊。その後、海軍の第四期兵科予備学生となり、1944年12月には海軍少尉に任官、埼玉県大和田通信隊に勤務しました。1945年4月には南九州・鹿屋基地に第五航空艦隊司令部付として赴任し、終戦を大分で迎えています。戦争は彼の人生に大きな影響を与えました。

編集者としてのキャリア

1946年8月26日、難関を突破し新潮社に入社。出版部に配属され、高校時代から愛読し親交のあった太宰治に『斜陽』の原稿を依頼するなど、太宰が心中するまでの約一年八ヶ月の間、編集者として最も頻繁に接していました。太宰治との出会いは、彼の編集者人生において重要な出来事でした。1948年春に新潮社を退社し、角川書店に入社。雑誌『表現』の編集に携わりました。その後、月曜書房を経て、1953年9月に筑摩書房に入社。『太宰治全集』を第六次まで担当しました。1978年7月12日、筑摩書房が会社更生法の適用を申請した際には、役員としての責任を取り退社。長年の編集者生活に終止符を打ちました。

作家としての活動

筑摩書房退社後、野原は作家として活動を開始しました。自身の経験や知識を活かし、数多くの著作を出版しています。

主要な著作

『回想 太宰治』：太宰治との交流を綴った回想録。
『作家になるには』：作家を目指す人への指南書。
『回想 学徒出陣』：自身の戦争体験を振り返った作品。
『太宰治 人と文学』：太宰治の生涯と文学を解説。
『含羞の人 回想の古田晁』：古田晁との思い出を綴った作品。
『編集者三十年』：編集者としての自身の経験を語った作品。
『人間 檀一雄』：檀一雄の人物像に迫った作品。
『宇垣特攻軍団の最期』：特攻作戦の悲劇を描いた作品。
『太宰治 結婚と恋愛』：太宰治の恋愛と結婚について考察した作品。
『肺ガン病棟からの生還』：自身の闘病体験を綴った作品。
『人間 坂口安吾』：坂口安吾の人物像に迫った作品。
『生くることにも心せき　小説・太宰治』：太宰治を題材にした小説。
『太宰治と聖書』：太宰治の文学と聖書の関係について論じた作品。
『太宰治 生涯と文学』：太宰治の生涯と文学を入門書として解説。
* 編『太宰治のことば　愛と苦悩の人生』：太宰治の言葉を集めた作品。

これらの著作から、野原一夫の多岐にわたる関心と、卓越した文章力が見て取れます。

野原一夫は、編集者として、作家として、激動の時代を生き抜き、後世に貴重な記録と文学作品を残しました。彼の作品は、今もなお多くの人々に読み継がれています。

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