野呂栄太郎

野呂栄太郎の生涯

野呂栄太郎（のろ えいたろう）は、1900年に北海道長沼町で誕生し、1934年に若くして亡くなった日本の著名なマルクス経済学者です。在野の学者でありながら、日本共産党では理論的指導者として重要な役割を果たしました。

早年期

彼の幼少期には大きな試練がありました。小学校2年生の時に関節炎を患い、片足を切断することになりました。この障害が影響して、彼は公立中学や官立高校への進学を許可されず、旧制進学校である北海中学に入学。そこで彼は学業に励み、秀才として名を馳せました。卒業後は慶應義塾大学に進学し、経済学を学びました。大学時代、彼は向井鹿松のゼミで学びながら、社会科学や革命運動に関心を寄せていきます。

学問と活動

大学卒業後、野呂は日本共産党の前身とも言える日本学生連合の関東代表を務めるなど、政治活動にも参加しました。彼の卒業論文は『銀行および生産の集中と金融資本制覇について』という重要なテーマであり、その後、マルクス経済学に関する研究を続けました。1926年、彼は慶應大学助手採用試験を受けましたが、不採用となりました。同時期に、在野の研究者たちと密に連携し、様々な社会問題に対する見解を形成していきました。

日本共産党への参加

1930年に彼は日本共産党に入党し、党内では幹部として活動しました。彼は党の理論的基盤を作ることに尽力し、特に『日本資本主義発達史』という著作においては、戦後日本の資本主義の発展を詳述しました。この書籍は彼の思想を表す重要な作品とされており、その後、他の著書や編集事業にも影響を与えました。

政治的な困難

しかし、彼の活動は厳しい弾圧に遭いました。1932年には熱海事件に関連して多くの党員が摘発され、党は壊滅的な状況に追い込まれました。それでも彼は反戦運動などに積極的に参加し続け、1940年代にかけての共産党の再建を試みました。

逝去

野呂は1934年、品川警察署での拷問により病状が悪化し、北品川病院で生涯を閉じることになりました。その死は、彼の活動に対する厳しい弾圧の象徴とも言えます。彼の遺志は、後の世代の研究や活動に引き継がれ、日本共産党内での顕彰も続きました。

学問と評価

野呂栄太郎の功績は、単なる経済学の枠を超え、彼の考え方や思想は今なお多くの人々に影響を与えています。1970年代には日本共産党が彼を称え、社会科学における優れた研究者に対する「野呂栄太郎賞」を設立し、この賞は2005年まで続きました。彼の作品は今日でも多くの研究者や学生にとって貴重な資料とされています。

家族と影響

彼の実妹は日本社会党衆議院議員の横路節雄の妻であり、政治的な影響力も持つ家族でした。文化人類学者の泉靖一とも親族関係にあり、彼らの交流は野呂の思想にも影響を与えたとされます。

結論

野呂栄太郎の生涯は、政治と学問が交錯する中で、多くの困難を乗り越えた苦闘の道程でした。彼の業績は日本の社会科学に貴重な足跡を残し、後の世代への大きなメッセージを送っています。彼の思想は、経済学の枠を超え、社会運動や政治の場にも強い影響を与え続けています。

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