向井鹿松

向井鹿松（むかい しかまつ）は、1888年に愛媛県で生まれ、日本の商業学、経営学、経済学、教育分野に多大な貢献をした人物です。彼の学問的足跡は、教育者としての顔、研究者としての顔、そして社会活動家としての顔を併せ持っています。

生い立ちと教育

1888年、愛媛県西宇和郡四ツ浜村（現在の伊方町）で、向井孫一の長男として生を受けました。向井家は代々農業と漁業を営む傍ら、父・孫一の代からは金貸業や養蚕業も手掛ける家系でした。1909年には慶應義塾大学部理財科予科に入学し、そこで商業学の基礎を築きました。卒業後は同大学の助手、そして商工学校と予科で兼任講師を務め、教育者としてのキャリアをスタートさせました。

学術研究と教育活動

1919年から1922年にかけて欧米へ留学し、経営学を深く学びました。帰国後、慶應義塾大学教授に就任し、商事経営、商業政策、取引所論、経営経済学、貨幣銀行論、金融論特殊問題といった幅広い分野の講義を担当しました。彼の講義は、学生たちに理論と実践の両面から深い知識を提供しました。

1937年に慶應義塾大学を退職した後も、名古屋商工会議所に移り、第二次世界大戦後には中央官庁の物価庁で部長職を経験するなど、行政分野でも活躍しました。その後、学界に復帰し、東洋大学、青山学院大学、中央大学、愛知学院大学、千葉商科大学、横浜商科大学と、数多くの大学で教鞭を執りました。また、日本商業学会会長、日本広告学会会長を歴任するなど、学会運営にも尽力しました。

社会活動

学術界での活躍だけでなく、社会活動にも積極的に参加しました。1950年の第2回参議院議員通常選挙には全国区から無所属で立候補しましたが、残念ながら落選しました。

受章と晩年

1966年には、その功績が認められ勲二等瑞宝章を受章しました。1979年6月30日、心不全のため東京都世田谷区の自宅で92歳で亡くなりました。

家族

父の向井孫一は、農業と漁業を営む傍ら金貸業や養蚕業も手掛け、村会議員、村収入役も務めた人物でした。

主な著作

向井鹿松は、数多くの著作を著しました。主な著書としては、『商業政策』(1920年）、『海外有価証券市場論』(1924年）、『取引所の理論的研究』(1926年）、『配給市場組織 財貨移動の社会的組織』(1928年）、『経営経済学総論』(1929年）、『綜合取引所論』(1932年）、『体系商業学』（1958年、福田敬太郎との共編）、『中学校 新しい商業』(1961年）、『流通総論―マーケティングの原理―』(1963年）、『標準商業一般』(1966年）などが挙げられます。これらの著作は、今日の商業学や経営学の分野に大きな影響を与えています。

参考文献

『愛媛県人物名鑑 第3輯』海南新聞社、1923 - 1924年。
「第6章　向井鹿松　－商業は組織なり－」『マーケティング学説史・日本編　増補版』同文館出版、2014年。
『国政選挙総覧：1947-2016』日外アソシエーツ、2017年。

関連事項

日本経営学会
* マーケティング

向井鹿松は、日本の商業学、経営学、経済学、教育分野において、その深い知識と幅広い活動で大きな足跡を残しました。彼の生涯は、学問と社会貢献の両立を目指す人々の模範となるでしょう。

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