野崎一

野崎 一（のざき ひとし）

野崎一は、日本を代表する有機化学者であり、特に有機合成化学と有機金属化学の分野で顕著な業績を残した学者です。1922年1月1日に岡山県で生まれ、2019年9月25日に逝去しました。その業績は日本の化学界に多大な影響を与え、戦後の有機化学研究の発展を支える一助となりました。

学歴と経歴

彼は1943年に京都帝国大学工学部化学科を卒業後、同大学の講師、助教授を経て、1963年には教授に昇任しました。1985年には名誉教授に認定され、岡山理科大学に移り教授職を務めました。その後、特任教授として岡山理科大学での活動を続け、1996年に退職しました。学界活動の一環として1985年度から1986年度まで有機合成化学協会の会長を務めました。1999年には日本学士院の会員に選出されています。

主な業績

野崎は、カルボカチオンを利用したテルペン類の合成や、カルベノイドを用いた新しい化学反応の開発に力を注ぎました。これらの研究は、日本の有機化学界の発展において重要な役割を果たし、特に金属元素の特性を活用した新規反応は当時の日本の化学を国際的に知らしめるきっかけとなりました。特に、彼らの名を冠した「野崎・檜山・岸反応」は、穏やかな炭素-炭素結合生成反応として、パリトキシンやエンジイン系抗生物質など複雑な化合物の合成に多く応用されています。このような革新は、戦後復興期の日本において重要な科学的進展とされました。

また、野崎は優れた著述家としても知られ、「ほしいものだけ作る化学」や「有機化学15億秒」といった著書を残しています。彼の著作は専門家から一般読者まで広く親しまれ、化学の楽しさや魅力を伝える役割を果たしました。

受賞歴と栄典

彼の優れた業績に対して多数の賞が授与されました。1979年には日本化学会賞、1986年には日本学士院賞を受賞し、1993年には有機合成化学特別賞を受けました。また、1986年には紫綬褒章を、1992年には勲二等瑞宝章を受章しています。これらの栄光は、彼の学術的な貢献と卓越性を示すものです。

家族

野崎の家族にも化学の分野において著名な人物がいます。三女の野崎京子は東京大学大学院工学系研究科の教授として初の女性教授となり、彼女自身も化学の分野で優れた業績を挙げています。

結語

野崎一の業績は日本の有機化学界に深く根付いており、彼の研究と著作は今後も多くの研究者や学生に影響を与え続けることでしょう。彼の死は化学界にとって大きな損失ですが、彼が築いた業績は決して色褪せることはありません。

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